2015年04月24日

鉄道でやってくるお客さん

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 その昔、北海道で旅していた時に釧路牧場ユースに泊まったことがある。そこのヘルパーさんが、みゆきの杜ユースホステルの中村さんであった。当時学生だった中村さんは、かなりの鉄道マニアだったらしくて、お茶会では、鉄道の話をしていた。彼は、その後ユースホステルを立ち上げるが、館内に鉄道模型を設置したわけだから、筋金入りの鉄道マニアである。そうなのだ、宿のオーナーには少なからず鉄道マニアがいるのである。

 北海道の霧多布には、きりたっぷりと言う宿がある。ここのオーナーも、かなりの鉄道マニアである。関係ないが、ここのオーナーの伝説がすごい。 2キロぐらい離れていたバス停の看板を、毎日1メートルずつずらして行って、自分の宿の真ん前に近づけていたらしい。そうすればお客さんに便利になるからである。まさに違法行為ではあるが、そんなことがまかり通るはずもなく、あと500メートルぐらいまで近づくと、バス会社の人にバス停を元の位置に戻されてしまう。しかし、彼はめげずに何度もバス停の看板の移動を行ったらしい。するとバス会社の人が、ある日突然訪ねてきて、あなたの宿の前に新しいバス停を作るから、バス停の看板の移動はやめてほしいと、頭を下げてきたらしい。まさに執念の勝利だ。

 長野県に「 ぽっぽのお宿」というのがあるが、名前からして鉄道マニアだなというのが分かる。ぽっぽは、鳩ポッポのぽっぽではなく、汽車ポッポのぽっぽでは無いかと思って泊まってみた。ビンゴだった。やはり、強烈な個性のオーナーだった。

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 ちなみに私は、新潟県は佐渡島の生まれである。当然のことながら、佐渡島には鉄道がない。だから本州に上陸した時に、鉄道の乗り方がわからなかった。と書くと「バカじゃないの」と思うかもしれないが、昔はYouTubeなんてものはないのだ。みんなにとって当たり前の事でも、鉄道を見たことのない人間には分からないのである。仕方ないので、同じ位の年頃の女の子に鉄道の乗り方を聞いてみたが、当然のことながら無視される。新手のナンパ方法だと思われて相手にされなかったんだと思う。

 でどうなったかというと、切符も何も持たずに改札口を通過してしまった。で、電車に乗って一生懸命に整理券の置いてある所を探した。もちろん電車に整理券なんかない。切符を買って改札口で駅員さんに見せなければいけないのに、改札口の駅員さんはどういうわけか私を通過させてしまった。ここから悲劇が起きる。なぜならば、私が下車した駅は、無人駅だったのだ。今はどうかわからないが、昔は、新潟駅の隣の駅は無人駅だった。そして壮大な勘違いをした。鉄道は無料で乗れると思ったのだ。もちろんそんな事は無いから、帰りに怒られることになる。長い前置きになってしまったが、私は鉄道に衝撃的な出会いがあったことを言いたかったのである。

 ところで北軽井沢ブルーベリーは、電車の駅からかなり遠い。バスに乗り継がなければいけない。そのために、鉄道マニアの人たちが宿泊するには、ずいぶん不利な位置にある。しかも1,200円もバス代がかかる。だから鉄道関係のお客さんは最初から期待してなかった。しかし不思議なことに、うちのお客さんに鉄道マニアは多いのである。これが長いことわからなかった。ところが、開業して数年後に、その理由がわかってしまった。まず、吾妻線の終点になる大前駅に来る鉄道マニアの人たちがいるのだ。どうして大前駅に来るかというと、線路がそこでストップしているからである。そーゆー線路に対するマニアというものもいるのだ。また、軽井沢の隣である横川に鉄道博物館があったり、そこから軽井沢につながるアプトの道があったりするので、そこに聖地巡礼を行う鉄道マニアもいる。あとコアなマニアとして、廃線となってしまった草軽鉄道の跡地は歩きたがるお客さんもいる。北軽井沢のバス停に来れば、草軽鉄道の駅がそのまま残っているし、そこに当時の鉄道の模型も置いてあるし、小さな無料の博物館もある。それを目的にやってくるお客さんも多いのだ。

 あと、鉄道マニアには、大きく分けて乗り鉄と撮り鉄というものがあるらしい。乗り鉄というのは、鉄道に乗るマニアである。撮り鉄というのは、鉄道の写真を撮るマニアである。当然のことながら、自動車で高台などに移動して鉄道を撮影する。そういう人たちは、車で移動するのが旅の基本なので、宿が駅から遠くても何も問題ないのだ。

 ところで、うちの宿には超大手企業の秘書付き重役だった人が、よく泊まりに来る。一緒にハイキングなんかに行ったりもするのだが、鈍行列車に乗って帰っていく。変だなぁと思ったら、やはり鉄道マニアだった。このクラスになると、1週間かけてオーストラリアの大陸横断鉄道を乗り回している。いわゆる乗り鉄である。壮大な趣味だなぁと思っていて、他のお客さんにそれを話していたら同じような人がいた。やはり超大手企業の役員さんだったが、この人は乗り鉄ではなくて撮り鉄だった。ヘリコプターをチャーターして、空から鉄道を撮影するのが趣味だと告白してきた。

 この手の人たちは、身分を隠してみんなと一緒にハイキングに行くので、ぱっと見た目には、普通のおっさんにしか見えない。だから若い鉄オタの学生さんたちなんかは、おっさん達たちと距離を持ってしまうのだが、実にもったいない話である。どう見ても普通のおっさんであるが、彼らは超大手企業の重役なのである。そういう人たちを無視して部屋に閉じこもる鉄道オタクの学生さんたちを見ると、もったいないと思うのは私だけであろうか?

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 話が大きくそれるが、昔からのユースホステルのお客さんは、非常識なくらい高学歴の人たちが多い。もちろんおっさんに限られるのだが、元東大生はともかくとして、東大の名誉教授とか、そのレベルの人たちが泊まりに来るからややこしい。しかも本人は、それをひた隠しにするものだから、それを知らないで、つい東大の悪口なんかを言ってしまって、後で恥をかくことがある。ハイキングツアーの時に、高山病のことを偉そうに解説していたら、お客さんがお医者さんだったというケースもあった。

 それはともかく、スーパー鉄道マニアにとってのエリートコースは、東大では無い。岩倉高校と昭和鉄道高校である。 JRに就職したい人たちは岩倉高校に進学する。私鉄に就職したい人たちは昭和鉄道高校に進学する。と、昔は相場が決まっていた。今はどうなのだろうか?

 私の友人に、岩倉高校からJRに入った人もいれば、昭和鉄道高校から私鉄に入った人もいる。小学生の頃に鉄道マニアになって、そのまま鉄道関係の高校に進学し、鉄道会社に就職する。しかしこのエリートコースが、最近弊害があるのではないかという話になって、 JRが中途採用を始めたらしい。その際に、鉄道と関係ない一般人を中途採用して、鉄分の純度を下げることを試みたらしい。マニアックな度合いを避けようとしているらしい。そういう経緯でJRに中途採用された人も、うちのお客さんに少なからずいる。そういう人たちに、本当に鉄道と関係ないんですか?と聞いてみたら、実は鉄道マニアだったけれど、その匂いを消して面接を受けたとの事。やはりマニアであった。しかし、面白いことに、いざ鉄道会社に入ってみたら、徐々に鉄道の趣味から離れていったらしい。趣味を仕事にすると、そうなりがちなのかもしれない。

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 その昔、 30年ぐらい前のことだが、全く女の子にモテなかった私の友人がいた。その友人は、ある日、新幹線の車内販売のアルバイトを始めた。すると突然モテ始めた。なぜだろうと不思議に思っていたのだが、その友人の自宅に行って驚いた。彼は、すでに美人の彼女と同棲していたのだが、部屋の中に鉄道のプレートみたいなものが、たくさん飾ってあったのである。言っておくが、その友人は鉄道マニアでは無い。なのになんでモテたのだろう? なぜ、部屋に鉄道の駅名の書いてあるプレートなんかは飾ってあるんだろう?と不思議に思ったのだが、新幹線の車内販売をしている女の子たちは、ほとんどが鉄道マニアだったのだ。そこで友人は、自分も鉄道マニアのふりをして、彼女をゲットしていたらしい。当然のことながら、鉄道マニアの彼女と同棲を始めれば、部屋中に鉄道関係のコレクター商品が乱立するようになる。駅名が書いてあるプレート何かが壁に貼ってあったらしい。

 これが、彼女との破局につながるから恐ろしい。

 友人は、潔癖症だった。当然のことながら駅名が書いてあるプレートに我慢がならない。昔の電車は、トイレのウンチなんかを走行中にばらまくわけだから、駅名なんかが書いてあるプレートは、もちろん黄色くなっている。最も黄色いのは必ずしもウンチのせいだとは言えないのだが、潔癖症の彼にしてみたら、そのように思えてならなかったらしい。なので、彼女が留守中に、そのプレートを全部きれいに洗ってしまったらしい。当然のことながらプレートはピカピカになる。彼は、彼女に褒められると思って洗った訳なのだが、鉄道マニアの彼女はかなり激怒して、 2人の愛は破局となってしまった。本物のマニアは、うんちが着いてるかもしれない駅名プレートに価値を見いだすらしい。だから彼女は激怒してしまったのだ。

 これも女欲しさに、趣味でもなかった鉄道マニアを演じていた天罰がくだったのかもしれない。だから、このブログを読んだ人は、彼女を作りに新幹線車内販売のアルバイトをするのはやめて欲しい。これはあくまでも30年前の話であって、今もそうかどうかは保証の限りでは無い。あとで私にクレームを入れないでいただきたい。

つづく。

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posted by マネージャー at 12:59| Comment(5) | TrackBack(0) | 業界裏話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
息子の初スキーで木島平を選びましたが、半分は中村さんの「みゆきの杜YH」に泊まるのが目的でした。
あのジオラマは見事ですね。ほかにも雑誌や部品など、息子にとっては宝の山でした。マスコンハンドル握りっぱなしで…
夕食時にはユニークな方々と会話も弾み「いつか友達連れて来たいな〜」と。こちらの宿もリピーターになりそうです。
Posted by あんみつ at 2015年04月24日 15:10
中村さんは、かなりの鉄道マニアですから、同じ趣味の人にとっては、最高だと思いますね。そのせいか、あの宿には鉄道関係の人が大勢集まるようですね。実はユースホステルのマネージャーには、少なからずのオタクがいます。網走流氷の家ユースホステルのマネージャーは、フォークソングオタクです。屈斜路湖ユースのマネージャーは、中島みゆきオタクだったと思います。
Posted by マネージャー at 2015年04月25日 23:42
偏見かも知れませんが、やはり、ユースホステルやペンションのような宿屋になる道に辿り着かれる方というのは、何かしらのオタク血中度が高くないと、お客さんを惹き付ける何かを発することができないのではないかとと思います。
宿屋に限らず、個人経営を志すということは、何かしらのコダワリがなくば、乗り出せないと思うからです。
勤め人に、どうしてもなりきれないと自覚して、起業するということは、やはり、どうしても譲れないものがあるのだろうと愚考します。それが趣味というコダワリだったり、スピリットというコダワリだったり。
Posted by みわぼー at 2015年04月26日 00:13
個人的な意見ですが、鉄道マニア、特に「乗り鉄」という人は、緻密な人が多いと思うんですよ。というのも昔バイクで北海道ツーリングをしていた頃、ユースでよく鉄道で旅している人と泊まり合わせたんですが、毎夜時刻表とにらめっこして明日の日程をきちんと立てていました。バイクで移動している私にはとても真似できませんでした(笑)
Posted by イトウ at 2015年04月26日 12:37
みわぼーさん

鋭いですね。まさにその通りで、宿屋の大半はオタクだと思います。例えば70歳代のユースホステルオーナーがいたりしますが、商売のことは全く考えずに、自分の趣味の道を突き進んでいます。それが農業だったり、動物だったり、ガーデニングだったりするのですが… 。あと、ペンションオーナーに多いのが、命令されるのが嫌いな人たちです。それで自営業を始めるわけですが、皆さんかなり個性が強いです。



イトウさん

そうですね、鉄道関係者は計画性の高い旅をしますね。私も彼らに、よく時刻表を見て飽きないなぁと質問をしたことがあるのですが、彼らにとって時刻表を見る行為は、一般人の読書と同じ位の日常だと言われました。あの分厚い時刻表を読むことによって、毎日新しい発見があるのだそうです。人によっては時刻表ではなく、ダイヤグラフなるものを持って旅している人もいました。総じて鉄道で旅行する関係者は、親切な人が多くて、電車の乗り継ぎなんかを研究していると、ニコニコやってきて、いろいろなアドバイスをくれます。しかも、進行方向に向かって前の方が、乗り換えの時に便利だとか、非常に詳しいアドバイスをくれたりしますね。

あと、時たま鉄道オタクの人たちが、自分の指定席を老人や子供に譲っているのを見たことがあります。なかなか出来る事ではないなあと感心して見ていますが、鉄道オタク関係者は、立って車内を散策するのが好きなので、遠慮しないでくださいと言っていました。
Posted by マネージャー at 2015年04月27日 09:06
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