「佐藤さん、若いなあ。若い若い・・・」
「え?」
「いいねえ、若さをもってるって」
「へ?」
「オレだったら、宿を辞めるね。辞めて楽な人生をおくる。もう一生働かない」
「・・・」
夏が終わって疲れているのでしょうけれど、たいていのペンションオーナー達は、宝くじが当たったら、もう働かないと言います。で、ついでに夢を語るのです。
「宝くじとは言わん。そんな夢みたいなことは言わんから、素泊まり20名20連泊の団体さんの予約が入らないかなあ?」
「それこそ夢みたいなことを言って・・・・」
皆さんには分かりにくいと思いますので、ここで解説をしますと、宿屋のオーナーさん達が一番喜ぶ御客様は、素泊まりの団体さんの貸切なんですよ。よく御客様が「食事をとらないと悪い気がして」とか、「食事をとらないからサービスが悪くなるのではないか?」と誤解している人がいるようですけれど勘違いです。宿主にとって食事をとらない御客様は上客なんですよね。だって『その方が楽』ですから。だけど食事をとらない御客様はリピートしませんから、皆さん、一生懸命に頑張っているわけです。で、借金を返し終わったとたんにB&Bの夕食無しの宿になるところが多いんです。これはユースホステルでも一緒ですね。
あと、もう一つ、よく勘違いされる件は、宿主は御客様を泊まった値段で差別することはないんです。ありえない。これは宿屋になると分かってもらえると思うんですが、御客様を差別するのは疲れる。みんな同一にした方が楽なんですよ。だから安い値段の御客様も、高い値段の御客様も、サービスに差はつかないと思います。もちろん良い客室にしたり、料理のランクをあげたりはしますが、接客態度に差が出てくることはまずはない。というか、忙しい時は出来ないというのが正解です。
しかし、ものごとには例外があるのも確かで、まれに差が出てくることもある。御客様が、あんまりいい人だと、何かしてあげたくなることはある。忙しい時は無理でも暇なときは、宿屋と御客様という範疇をこえて、人間として対等な立場で、困ってる人に親切にしてあげたくなってしまうこともある。
また、たまたま軽井沢に用事があるときは、軽井沢まで車で連れて行ってあげることもあるし、御客様が1組しか泊まってない時なんかは、もし子連れの家族がツインに添い寝2人という予約で、2人分しかお金をいただいて無くても、4人部屋に入れてあげるくらいのことはしています。
で、そういうサービスをしてあげても、律儀にベットを2つしか使わない御客様もいます。せっかくサービスで4つのベットを用意しても、遠慮して使わない御客様もいる。たいてい京都の御客様だったりする。京都の御客様は、本当に気遣いが細やかな人が多いんですよね。
脱線しますが、車をもってない京都の4人家族の御客様が、この夏に泊まったんですけれど、その日は、うちの宿は夕食を作らない日だったんですよね。で、京都の4人家族の御客様が、あちこちのレストランに歩いて出掛けたんですが、全部、予約で断られてしまった。それを聞いた私は、
「レストランまで送迎しましょうか?」
「いや、いいです。おとうさんが自転車でコンビニに買いに行ってますから」
みると未就学児が2人、お腹をすかせている。この子達にコンビニ弁当はかわいそうだと思ったので、
「チャーハンと味噌汁のまかないを一緒に食べませんか?」
と誘って一緒に食べたんです。そこに、おとうさんが帰ってきたんですが、おとうさんはコンビニではなくてスーパーに行って刺身など、御馳走を大量に買ってきた。それを私たちにもお裾分けしてくれて、チャーハンの賄いなんかより数段豪華な料理になってしまったこともありました。結果として、うちがエビで鯛を釣ったような形になったので、お礼にビールとか酒を出したりしたんですが、京都の御客様には、こういう気遣いが細やかな人が多いんですよね。
まあ、地域によって気遣いの現れ方は、千差万別です。大阪なんかは別の気遣いがみられる。会話で場をもりあげたり、寂しそうにしている人をいじってあげて、全体の雰囲気をよくしてくれたりする。これは、また京都とは別の気遣いなんですよね。ベクトルが違うんです。だから地域・地域で気遣いの現れ方が全く違ってきています。そのへんが面白いですね。
おっと宝くじの話でした。
もし、7億円があたっていたら、アニメか映画会社のスポンサーになって、北軽井沢を舞台に何か作品を作ってもらいますよ。もちろん北軽井沢ブルーベリーYGHを使って。ま、そんなことあり得ないんですけれどね。
つづく。
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京都からですと答えると、決まってかえってくる言葉は、
京都のぶぶ漬けの話をされたものでした。
今回のマネージャーさんの書かれたものを読み、
そのイメージが払拭されるといいな・・と思います。
マネージャーさんの心ある対応が、
お客さんをも動かしているのだと思います。素敵な話ですね!
京都のぶぶ漬けの話も、京都流の自虐かもしれませんね。
でも、京都人の気遣いが通用しないと、
京都人なりの反撃もあるのかも。
もちろん、こちらは気が付かないかもしれませんが。
しかし、いったん京都人の気遣いがわかってくると、
それが目に付くようになるんですよね。
イトウさん
私の年齢が年齢なので・・・・(笑)
いつ死ぬかもわからないし