軽井沢町の公式解説は、萎えるので省略。
以下、独断と偏見に満ちた私が解説します。
室生犀星は、大正・昭和の青年少女たちの心を掴んで泣かせた大作家です。自分の生い立ちの不幸を飯のタネにして、何百万人の読者を泣かせた男です。代表作の『性に眼覚める頃』『あにいもうと』なんかには必ず悪役の育ての親がでてくるんですが、そのモデルは室生犀星の養母なんですね。そういうパターンで全国の読者の眼を濡らしたわけです。しかし、実際の養母は、そんなに悪い人ではなかった。しかし彼は作品の中に悪役として養母の悪行をフィクションとして注入し、読者を煙に巻き、それを墓場までもっていった天性の魔術師です。
もちろん文章も発想も天才的で、宮崎アニメの『崖の上のポニョ』は、室生犀星の『蜜のあわれ』のパクリという人は多いです。私も同意です。そういえば『蜜のあわれ』は、二階堂ふみ主演、石井岳龍監督で映画化されるらしいですね。完成したら崖の上のポニョと見比べるといいですよ。ちなみに日本ユースホステル協会を創設した横山祐吉は、この室生犀星を師匠にしていて、若い頃にさかんに少女小説を書いています。
話がそれました。
室生犀星記念館のことです。
室生犀星は、この別荘で、昭和6年に建てて亡くなる昭和36年までの毎夏この地で過ごしました。戦争中は、ここに疎開もしていました。で、記念館に行ってみると分かるのですが家が小さい。そして庭がすごい。室生犀星は自分で庭をつくる趣味があったんですが、これにも深いワケがあります。長くなるので、それについては、また別の機会に話します。
とにかく室生犀星の別荘を見て、こういう小さな家で、厖大な作品群を書いたという事実に衝撃をうけてください。あ、言い忘れましたが、室生犀星は、ものすごい多作の人です。Wikipediaで調べてわかるとおり、ものすごい多作であり、それぞれが名作であり、ハズレが少ない。なのに、こんな小さな別荘で書いていたとは、とても信じがたい。そのわけは、彼には資料が必要なかったからでしょう。なにしろ体験もとに小説を書いていますから。逆に言うと、体験をもとめて毎年、軽井沢にやってきたのかもしれません。なにしろ軽井沢は、日本離れしたところでしたから。
長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢979−3
TEL 0267−45−8695 (教育委員会文化振興係)
開館時間 9時 〜 17時 (4月29日から11月3日)
休館日
期間中は無休
入館料 無料
◆堀辰雄文学記念館
軽井沢町や辰雄文学記念館の公式解説は、萎えるので省略。
以下、独断と偏見に満ちた私が解説します。
宮崎アニメの『風立ちぬ』は、堀辰雄の『風立ちぬ』のオマージュですね。ここでもやってしまってるのか宮崎アニメよという感じです。堀辰雄は、19歳で結核患者になっています。結核は、当時は死の病気。だから『風立ちぬ』の体験が入っています。
彼は室生犀星と仲が良かった。軽井沢にはじめてきたのは、大正12年の19歳の時で室生犀星と一緒に訪れています。その時、室生犀星は34歳で、天下に名声をえていて結婚もしています。そんな室生犀星が、まだ無名に近い堀辰雄を軽井沢に連れてきている。室生犀星の懐の大きさを感じます。ちなみに、この後に関東大震災がありました・・・と書くと、宮崎アニメの『風立ちぬ』を見た人は、ピンとくるものがあるんじゃないですか? 私のいいたいことはわかりますね。あれは単なるオマージュではないかも。
それはともかく堀辰雄は軽井沢がよほど気に入ったのか、毎年のように訪れるようになり、軽井沢を舞台とした数々の作品を残しました。19歳から結核を患い、生きることに執着しながら作品を書き49歳で亡くなっている彼の文学は、生の文学とも、病気の文学ともいわれています。彼は自らの結核療養体験で『風立ちぬ』を書いて、当時の女子を泣かせました。
女子を泣かす文学の先輩としては、室生犀星もこれにあたりますが、室生犀星の場合は、リアルさがありますけれど、堀辰雄の文学は、少々ロマンチックというか、ライトノベルや携帯小説ぽいところがあります。題名の傾向からして違っている。両者を比較して読んでみると面白いですね。
もちろん読みやすいのは、堀辰雄ですけれど、室生犀星もかなり読みやすいです。すくなくとも芥川龍之介よりも読みやすい。3人とも著作権が切れているのでインターネットで読めますので、よかったら読んでみてください。
ちなみに『風立ちぬ』は、主人公のヒロインが結核で死ぬ話なのですが、昔は結核になると、死を宣告されるような重い病気でした。しかし、軽井沢に療養に来ると、不思議と結核が治るケースが多かったのです。そのために全国の結核患者が、次々と軽井沢にやってきました。そして色々なドラマが生まれたりしたのですが、それを小説にしたのが堀辰雄です。
今では、どうして軽井沢に来ると病気が治るのかが、医学的に証明されつつあります。森の中に三日間滞在すると、体内のnk細胞が増加して、体の免疫機能が増えるのです。そのために、人によっては、自分の持ってる免疫力で病気を退治したりしました。おまけに軽井沢には、カラマツという針葉樹林がたくさんあります。針葉樹林は、広葉樹林よりも免疫力を増すらしいのです。
それはともかく、大量の結核患者が軽井沢に滞在するようになると、それを見たもともとの住民たちが、非常に結核を恐れるようになりました。なにしろ軽井沢に結核患者が大量にいるのです。自分たちも、感染しないだろうかと不安になったようです。特に体を使う仕事をしていた農家の人たちは、結核に感染しないように防御措置を取りました。その防御措置とは、いわゆるグルメです。
結核は貧困が原因とまでいわれる病気だったので、人々は結核にならないように、特に食事に気を付けました。今では考えられないことですが、甘い物や白砂糖も口にしました。白砂糖はもともと漢方薬です。ご飯は白米を食べました。こうやって結核予防したわけですが、結核にかかる代わりに、歳をとってから糖尿になってしまったから皮肉なものです。私の宿の地主さんも、そういうパターンで糖尿病になってしまいました。しかしこれは仕方がなかったのかもしれません。終戦直後まで、結核は癌より怖い死の病気だったのですから。
どちらにしても、極端に走りにすぎない方が良いのかもしれません。結核を恐れて、極端に炭水化物を取り過ぎれば、その反動はいずれ別のところにやって来るのですから。偏食をせずバランスよくなんでも食べるというのが良いと私は思いますし、食事だけではなく散歩をしたり体を動かすことも大切ですし、ストレスを解放することも大切でしょう。
長野県北佐久郡軽井沢町大字追分662
TEL 0267−45−2050
開館時間 9時 〜 17時 (入館は16時30分まで)
休館日
・水曜日(水曜日が祝日の場合は開館)
・ 年末年始(12/28〜1/4)※7月15日〜10月31日は無休
入館料 大人400円 子ども200円 (追分宿郷土館と共通)
つづく。
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