彼は東京大学・ケンブリッジ大学を出て、外務省に入り、アメリカのシアトル領事、ニューヨーク領事と活躍した人が、亡くなってしまった。惜しい。悔しい。彼の死は、今後の日本の国益を左右するほど大きいのだが、そんなことはどうでもいい。悔しいのは、彼に小学6年生の息子がいたことである。
彼は、この1年間、北軽井沢ブルーベリーYGHにきては、子供の話ばかりしていた。本物の親バカだった。ミクシーでも、Facebookでも、親バカぶりを発揮していた。しかし、悲しいかな、彼は自分の息子と面会できないのだ。別に離婚しているわけではない。別居していて会えないのだ。その原因は述べない。話したどころで、誰も信じないくらいに奇想天外だからだ。
それはともかく最愛の息子に会えない。その愚痴を1年にわたって聞かされた。そのたびに私は心を痛めた。なぜならば、この人には時間が無かったからだ。癌だったのである。しかも治療費が無かった。外務省のキャリアにもかかわらず治療費に苦労していた。
何かしてあげたかったが、私には、どうにもできなかった。私がしたことといえば毎回、夜遅くまで話をきいてあげて、食事には、おかゆなど特別なものを作った。胃癌だったので、食べられるものが極端にすくなく、食べては吐いたりしていて、アミノバイタルのゼリーしか食べられない事が多かった。
彼は、よく携帯メールを送ってきた。1時間に10通きたこともある。嫁さんは「恋人みたいだね」と笑っていたが、私は返事を書けなかった。携帯で文字を打つことが苦手だったので、返事はパソコンで返した。悪いことをしてしまった。もっとメールすればよかっさたが、子育てと接客におわれて邪険にしたこともあった。今思うと、なんで、もっと返事しなかったのだろう?と悔しくてならない。
彼の死は、Facebookを通して知った。
世界中から死を悼む書き込みと
生前の写真が貼られていた。
それらの写真に、子供たちと楽しそうに遊ぶ写真が何枚も貼られていた。じつは、うちの息子とも、よく遊んでいた。最初は、子供好きなのかなと思っていたのだが、すぐに違うことが分かった。自分の息子のことを、いつも考えていたのだ。それだけに私の心は痛かった。
こういうことがあると、つくづく健康が第一だと言う気がする。東京大学・ケンブリッジ大学・外務省・領事というコースで出世しても健康を害しては何にもならないからだ。
そもそも彼が胃癌になる予兆はあったのだ。一時期ストレスで胃潰瘍になり、げっそり痩せていたからだ。なので、彼は健康には人一倍気をつかっていたし、健康診断も欠かさずうけていた。いわゆる健康オタクだった。
なのに胃癌になってしまっていてリンパ腺に転移していた。どんなに気をつけていても、ストレスから解放されない限り、健康にはなれなかったかもしれない。皆さんもストレスには気をつけていただきたい。まわりに「やさしい世界」をもってほしい。
ただ、今となっては、いろいろと聞かされたおもしろい話は、信頼できる旅仲間たちに語り継ぎたいと思っている。シアトル時代の話や、いろんな旅の話や、四国時代話や・・・・。そして、いつか・・・。
つづく。
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