例えば昔から教育者たちは、子供に対して物で釣るのは良くないと言ってきました。子供のやる気を菓子などを使って引き出して、コントロールをするのは良くないと言われてきてます。ところが日本脳科学のトップ・京大の久保田競先生(テレビ番組『ほんまでっか』の澤口先生の師匠にあたります)は、そうではないという。報酬を与えることによって、脳が成長するので脳科学的には物で釣るのはよいといいます。
最初私はこの理論に対して半信半疑だったんですが、息子に対して実験してみたら信じられない能力を発揮しました。百名山を簡単に登っちゃう。庭掃除や食事つくりの手伝いもする。脳科学者のいうとおりの結果がでるのです。しかも、そのうちモノで釣らなくなっても、問題なくできるようになっている。
16万人の脳画像を見てきた瀧靖之先生は、幼児は大人の真似をすると言う単純なことを脳科学的にいろいろ説明しているんですが、それを参考に私は、2歳児になったばかりの息子に、平仮名カタカナアルファベットを教えました。3歳になってからは、小学1年生小学2年生の漢字を覚えるようになりました。最近は九九の一部も暗記しています。四十七都道府県名も漢字で覚えています。それを見て、宿のお客さんたちが驚きますが、これも種を明かせば
「なーんだ」
とあっけにとられると思います。何も知らない人からしてみたら、うちの息子が天才に見えてしまうかもしれませんが実は逆。成長が遅いから覚えたんです。息子のIQは低めなんです。息子は、3歳をすぎても会話がスムーズでない。
知能指数が高いと自立が早くて好き嫌いが出てきます。逆に低いと自立は遅く好き嫌いも出てきませんし、親の真似ばかりします。それを逆手に取って、平仮名・カタカナ・アルファベット・漢字・九九を覚えさせましたが、その方法は驚くほどシンプルです。
まず、風呂に漢字やアルファベットのポスターを貼って息子と一緒に風呂に入ります。そして私が、ポスターを見ながら漢字やアルファベットや平仮名カタカナを読みます。すると息子を真似をします。私がアルファベットを読めば息子も読む。漢字を読めば漢字を読む。それを繰り返すと、これが息子のルールになる。
2歳児は、手探りで世の中の法則やルールを探そうとしますから、いったん2歳児の息子にルール化されてしまうと、風呂に入るたびに行う行事となってしまいます。これを私は「幼児のマイルール化現象」と呼んで、しばしば私のブログに偉そうに公表していたんですが、実は脳科学者たちが、その現象を解明していました。
http://kaze3.seesaa.net/article/423723311.html
幼児は必ず大人の真似をします。真似をすることがあらかじめ脳に組み込まれています。それがミラーニューロン。ミラーニューロンというのは、真似をする脳細胞のことで、ものまね細胞と言われてますが、これがあるために赤ちゃんは親の真似をするんです。親の笑い方とか泣き方とか怒り方を真似をする。だから子供は親が育てたようにしか育たないと言われるわけです。
それを利用して2歳児や3歳児に平仮名・カタカナ・アルファベット・漢字を覚えさすのは誰にも簡単にできます。簡単な上に息子の成長が遅かった。親を真似する期間が長かった。もし息子のIQが高くて成長がはやかったとしたら、3歳にして漢字覚えることはなかったと思います。平仮名・カタカナを覚えた頃に、好き嫌いが発生して親の真似もしなくなったでしょう。
幸か不幸か、うちの息子は発達が人よりも遅れて、いつまでも赤ちゃんぽいままで、言葉もよくしゃべれませんでした。賢そうな感じは全くなくて、そのかわりに人様からかわいがられ、いつまでも親の真似をし続けたのです。そして、幼稚園の先生からは面談で暗に「(要約すると)落ちこぼれている」と言われてしまっている。で、落ちこぼれの息子のために専門の先生を紹介してもらうことになっています。
けれど、そんな息子は、平仮名・カタカナ・アルファベット・漢字を覚え、九九の一部も暗記し、百ピースもあるパズルを次々と完成させ、日本地図で遊び、47都道府県を全て漢字で読めるのです。そのうえ三千メートル級の岩山まで親の助けなしに自力で登っている。
しかし幼稚園では落ちこぼれている。
賢さは全くない。
赤ちゃんぽさが抜けきらず、
大人たちからかわいがられる毎日。
これはチンパンジーとニホンザルの関係に似ています。ニホンザルは、チンパンジーよりはやくものを覚えますが、成長が止まるのがはやいために、最終的に学習期間が長くて成長の遅いチンパンジーの方が知能は高くなる。これと同じです。息子は、成長が遅かったので親の真似をする期間が長かった。それを利用して文字を覚えさせた。もちろん息子には勉強した感覚はない。ただ単に遊んでいただけ。
動物学をかじった人なら分かると思いますが、野生動物も遊びながら学習させます。ライオンだってスパルタ式に狩りを教えません。
幼児に行うスパルタ式は、脳に深刻なダメージを与えることがわかっています。人間の脳は、ストレスを与え続けると萎縮するようにできています。ベトナム戦争に行った軍人たちは、度重なるストレスのために脳が萎縮して記憶障害を起こしたことでも証明されています。嫌な記憶は忘れようとする。そのために脳が萎縮してしまうというのです。
では「叱らないしつけ」をするべきかというと、これも多くの学者によって否定されている。スポック博士も間違えていたことを認めているし、最近のアメリカでは「子供には叱られる権利がある」と言う風潮にさえなってきているらしい。進化適応の考えからも否定されている。野生動物で、親が子を叱らないでいたら、アッという間に天敵に殺されてしまうから「叱る」という行為は、進化適応にかなった行為であるといえる。
そこで息子が産まれてから、どのように叱ると効果があるのか? それを確かめる実験をしていました。 1分。 3分。 5分。 10分。このように大雑把に4つの時間で叱ることによって、効果を確かめてみたのです。もちろん1週間おきに時間帯を変えています。
結論から先に言うと、生後12ヶ月ぐらいまでは、効果における差異はなく、あまり強く叱りすぎると、相手が驚いて、こちらとの接触を拒否し出すことが多々あった。生後12ヶ月までは、強く叱ってはいけないのではないかと思いました。
生後13ヶ月頃から24ヶ月頃までは、叱ることによって、効果が出始めるようになるのですが、いちばん効果的なのが1分でした。それ以上超えると、むしろ強情な面が出て反発します。けれど1分で叱るのを止めると、父親の懐に飛び込んできて抱きつくのです。その姿が、父親のダメ出しに抗議するというよりも、もっと優しくしてほしいと言う欲求のように思えてなりませんでした。どうも息子は無限の愛情を求めているような表情が見え隠れしたわけです。
そこで叱り方を少しばかり変えてみました。叱る時間を、 1分とか、 5分とかに区別するのではなくて、叱った後に、5分、 15分、 30分、 1時間。というように遊ぶ時間をプラスしてみたわけです。叱った後のフォローの時間を変えてみたわけです。
私は自然ガイドをやっている関係上、動物の生態は多少勉強しています。だから野生動物の子供たちは、遊びを通して子供を1人前の大人に育てていくこともよく知っています。なので、叱ることと遊ぶことをセットすれば、非常に効果的ではないかと思ったわけです。で、試しに叱ると遊ぶをセットものすごく聞き分けが良くなった。1分ぐらいきつく叱った後に、30分ぐらい濃密に仲良く遊ぶと、聞き分けが良くなるんです。親に嫌われないように、気をつけるようになるんです。
では叱らずに濃密に仲良く遊ぶだけだと 1週間ぐらいでわがままが増長し始めます。近寄るだけでそっぽを向きます。例えば、朝食事中に顔を近づけると頭突きをしてきます。それを繰り返すと、足で顔を蹴飛ばしたりするようになります。しかし、ものすごい形相で1分しかった後に、 30分ぐらい仲良く遊ぶと、信じられないくらいガラッと変わります。向こうから親と遊ぼうとしてくるんです。
どうやら、短時間きつく叱り、その後に遊ぶことによって、親子の関係はより密接になるようです。叱る時間は短時間で激しい方が効果的で、その後に徹底的に仲良く遊ぶことによって、息子がすごく素直に親の言うことを聞いてくれるようになり、親に対して気遣いをするようになる。それが他の人たちに対しても行われるようになる。もちろん他の子供たちに通用するとは限りませんけれど、うちの息子に限って言えば、非常に効果的でした。
では、きつく叱るだけで遊ばなかったらどうなったかというと、私が近寄るだけで、手に持っていたおもちゃを放り投げたりする。何だかわからないけれど、叱られるかもしれないという恐怖が、その行動を取らせているようです。つまり叱った直後にすぐフォローを入れないと父親を怖がるだけで教育効果がない。しかも息子が怒りっぽくなって、母親に反抗的になってくる。公園の子供たちに対しても、無礼になり社会的にマイナスな態度をとるようになる。百害あって一利なしです。
以上考えてみると叱ると言う行為は、遊びの延長線上でないと効き目がない。少なくとも私の息子に対しては、効果的ではありませんでした。遊んでいるうちに叱る。強く叱るけれど1分で止めて、その後最低30分は楽しく遊ぶ。こういうことを繰り返すと、教育的な効果が高い。できれば叱るのは週に1回以下にする方が良い・・・・。それ以上増やすと脳にダメージが増える可能性がある。脳は、辛いことを忘れようとしますから、あまり叱りすぎると脳が萎縮してしまう。せっかく覚えた平仮名も一緒に忘れてしまう可能性がある。
つづく。
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