(2)自分の力だけで登ったと錯覚させる
(3)褒めまくる
(4)報酬を与える
(5)装備を調える
(6)山を歩かせない
(7)音楽の手を借りる。
これらの7つのコツを使って息子を山好きにさせていきました。そして、池ノ平湿原の木道歩き。桟敷山林道、武具脱の池、万座温泉、渋峠に横手山、湯の丸山、標高1999メートルの破風岳、軽井沢の離山、榛名山と、少しずつ山登りの難易度をあげていきました。すると、驚いたことに急にバランスの取り方がうまくなっていきます。
1.池ノ平湿原の木道歩き
2歳児にとって初めての本格的登山は、木道と階段しかない池ノ平湿原が良いと思っていました。一番の理由はトゲです。幼児の皮膚は柔らかいので、大人ならなんでもない枯れ枝でも、トゲとなってささってしまうのです。これがやっかいで、そのたびに毛抜きでトゲをとってあげるのですが、2歳7ヶ月だと必ずしも協力的とはかぎらないので大変な苦労をします。ですから藪のない木道と階段が理想的なのです。階段は、大人にとっては苦しい登りですが、幼児にとっては必ずしもそうではないんです。
なので息子にとって生まれて初めての自力登山は、2015年10月6日。池ノ平湿原の木道歩きと雲上の丘です。ここは木道と階段ばかり。こういう山なら好奇心に負けて藪に入るようなことはありません。普通の山だと好奇心で枯葉や枯れ枝をさわって、トゲが刺さるなど大変なことになるからです。
また、野生動物のウンチにも気を付けなければいけません。岩場には、たくさんのウンチがいます。しかし、そのウンチは、雨に打たれて綺麗な赤い木の実の姿をしているんです。好奇心の強い幼児は、これに触りたがるんです。しかし、階段や木道を歩かせると、赤い木の実のウンチなんか目もくれずに前進しようとします。日本のまっすぐな道や階段があると、どういうわけか2歳児は、まっすぐに前進したくなるんですね。それを浅間牧場などで経験済みだったので、池ノ平湿原を歩かせたわけです。
2.桟敷山林道
ここも両端が笹藪なために木道と同じような効果があります。あと笹藪地には野生動物のウンチがないために安心して歩かせられます。気をつけるべきはダニですが、10月すぎれば安心して良いでしょう。
3.武具脱の池
4.万座温泉
5.渋峠に横手山
この3つも木道があって幼児を歩かせるには安心できるので良いですね。
6.湯の丸山、
芝生があるために怪我無く歩けます。藪も無いです。ただし、牛のウンチと野いちごのトゲが怖いので、そこだけ要注意です。
6.破風岳
標高1999メートルですが、幼児にとっては比較的登りやすい山ですね。
この山では、最初から最後まで自力で登っていました。
これ以降は、オンブもダッコも無くなっています。
動画もあります。
2歳7ヶ月の幼児が強風の中を登っている姿が見られます。
これは頂上での様子。
7.軽井沢の離山
安心して登れる山の一つですね。
なだらかで、途中に木道のルートがあります。
そして最後は階段なので幼児に優しいルートです。
8.榛名山、
安全に登れる山がたくさんあります。
それと木道のルートがあって、2歳の幼児に優しい場所です。
池ノ平湿原の木道歩き。桟敷山林道、武具脱の池、万座温泉、渋峠に横手山、湯の丸山、破風岳、軽井沢の離山、榛名山と、少しずつ山登りの難易度をあげていきました。すると、驚いたことに急にバランスの取り方がうまくなっていきます。うちの息子は、1歳6ヶ月くらいから毎日のように浅間牧場を歩いていましたが、それを1年間つづけるよりも、数回の登山の方が上達がはやい。何十回も牧場を散策するより、数回の登山の方が劇的に運動神経がアップしているのです。ヨチヨチ歩きが消えて大人のようにスタスタ歩けるようになる。登山で何かコツをつかんだみたいで、反射神経がよくなって、無駄な動きが少なくなって、階段をスイスイと上ったり、坂道を楽々と登るようになっていました。
こうなると道草が少なくなってくる。以前は、牧場を散策しても、草花をさわったりで前に進まなかったのですが、道草が減ってきて歩行速度がはやくなる。そして歩くのが楽しそうになる。おやつなどの報酬をあたえなくても歩きたがるようになる。槍ヶ岳に登ることも可能になってくる。体力と運動神経で見通しがたってくる。
問題は「相部屋の山小屋に行儀良く泊まれるかどうか?」です。
これが一番の難題です。
槍ヶ岳に登るには、山小屋に4泊しなければならない。
3歳児が大人しく相部屋の山小屋に泊まれるのか?
という問題がでてきます。
で、高級ホテルに泊まって練習することにしました。もちろんコース料理つきのホテルです。ファミリー対象のホテルではありません。そういうところは、子供は騒ぎ立てるので、息子の勉強のためには有害です。
2歳児になると世の中のルールを理解しだします。と同時に、イヤイヤ期がはじまります。何か気に障ることがあると激怒するようになります。しかし彼らが激怒するときは、必ずと言っていいほど、彼のマイルールから外れた時です。
例えば、スーパーに行った時に、まず最初に試食コーナーに行って試食を息子が食べたとします。それを三日間連続して行うと、スーパーに行ったらまず試食コーナーで食べるというルールが息子の中に出来上がります。そういうルールで世の中動いていると息子は勘違いする。2歳児のイヤイヤ期というものは、 2歳児のルールに対する中途半端な理解によって発生するのです。
逆にいいますと、マイルールが無い場合は様子をみます。2歳児は静かになります。行儀がよくなります。だから「他所様の前では、行儀が良いのに、親の前では我がままになる」と言うお母さんたちの証言がでてくるのです。お客様の中には
「うちの子は、内弁慶なんです」
と証言するお母さんが何人もいましたが、内弁慶なのではなく、見知らぬ環境に驚いて、どう接して良いかわからない。自分の中にある原則=マイルールが確立してないので様子をみている。で、まわりの大人たちが静かに食事をしていると、それを見習うようになる。
だから子供たちが大勢泊まっていて暴れ回って親が注意してないような宿に泊まったとしたら、息子は自分も暴れて良いと思ってしまう。まわりをみて学習して、それが自分のルールになってしまう。だから2歳児にルールを学ばせる場所が非常に重要になってきます。
なので息子が2歳の時に宿を休館にし、マナーを要求される高級ホテルに何度も泊まりに行きました。「宿は静かに泊まるところ」という刷り込みを行うためです。最初が肝心ですから。
で、高級ホテルに泊まると、案の定、レストランの一番奥のすみっこに席が用意されていました。そして予想通り隣のテーブルの人に嫌な顔をされます。で、ハラハラしながらコース料理をいただいたのですが、ホテルの雰囲気に圧倒されたのか、息子は最後まで静かに食べてくれます。そして周りが豹変(ひょうへん)します。ホテルの人には、
「素晴らしい」
「本物のジェントルマンですね」
と絶賛してきます。最初は舌打ちされたうえにジロジロみていた隣のテーブルの人たちも、わざわざ近づいてきて、お褒めの言葉をくれます。
親としてはホッとします。 もちろん息子がジェントルマンな訳がありません。泊まったホテルの格式が、息子にマナーを刷り込んでくれただけです。親の緊張が息子に伝わっただけです。こういうことを何回か繰り返すと、息子は宿に泊まるときは静かにするもんだと刷り込まれます。こうしてやっと、
「山小屋も大丈夫だ」
と確信できまるようになりました。後は簡単です。息子の体力だけが課題ですから。
脳の発達にはいくつかの臨界期があると言われています。例えば視覚。誕生から数ヶ月間、全く光を知らないままでいますと、脳の視覚システムが構築できず一生涯失明したままになります。これが臨界期です。
また、十歳までに人間社会の言語に触れることができなかった子供たちは、脳における言語システムそのものが構築できないために、 十歳以降にどんなに勉強しても文字を覚えることも言葉を話すこともできないと言われています。これが言語の臨界期です。
そして脳の発達にはもう一つの臨界期があると言われています。それは脳の「眼窩前頭域」で、この部分の盛んな発達は生後36ヶ月ぐらいだと言われています。この「眼窩前頭域」の発達が脆弱だと自分の感情が抑えられないハイリスクの子(危険度の高い子)になり、共感能力や思いやりを欠く子や、無気力、無感動な子になりやすい言われています。
躾をするには、この時期が重要なので、分不相応にも高級ホテルに泊まり、静かに行儀良くできるように訓練しました。こうして、息子が山小屋に泊まれる能力を磨きました。後は、本格的な百名山に次々とチャレンジするだけになりました。
ところが誤算がありました。
子供園(幼稚園)です。
つづく。
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