もちろんそんなことなど気する私ではありません。いろんな高級ホテルで「本物のジェントルマン」と絶賛されていた息子です。幼稚園の評価など屁ほども思ってなかったのですが、うちの嫁さんの方が気にしました。
息子を幼稚園を休ませ山に行こうとすると、くそ真面目な嫁さんの機嫌が悪くなる。仕方ないので、しばらくは真面目に幼稚園に通わせたんですが、保育所と違って幼稚園にはいろんな授業がある。毎日出ていないと落ちこぼれたりするんです。ハサミの使い方とか、お遊戯の仕方とか、そういうものに落ちこぼれてしまう。
息子は、入園する前から2000メートル級の山に自力で登っているし、文字も漢字も覚えている。おまけに高級ホテルで絶賛もされているので全く心配してなかった。けれど幼稚園の授業は、どうもそういう能力を磨くところではないらしい。そのために息子は授業についていけないらしい。
そもそも息子は3月26日の早生まれですから、 5月とか6月に生まれた幼児に比べたらかなりハンデがあります。おまけに成長が遅い。同じ3月生まれの他の子たちに比べても、かなり成長が遅い。言葉もしっかり話せない。
だから仕方ないと言えば仕方ないので、容赦なく子供園を休ませては、遊びに連れて行ったり、山に連れて行ったりしていたんですが、熱心な担任の先生からはクレームが入ってしまう。このままでは年中組になったときに、(要約すると)落ちこぼれてしまうというのです。
バカバカしいとは思いましたが、真面目で教育熱心でな先生の言うことなので、まるっきり無視をするわけにもいかず、山に連れて行く回数が半減します。おまけに今年は、 6月から9月にかけて長雨が続いたので、山に行く回数も激減。
私をよく知ってる人なら、私が幼稚園の先生ごときの言うことを聞く人間で無い人間であることは周知の事実です。私は息子が生まれると同時に、周囲に「俺はモンスターペアレントになる」と公言していましたから。
しかし、幸か不幸か息子の担任の先生は、驚くほど良く出来た先生で、本当に息子のことを親身になって世話してくれます。教育熱心で真面目で熱心に幼児教育に打ち込んでる。私は、こういう先生に弱い。私でなくても、誰が父親でも弱いと思う。先生に対して頭が上がらなくなる。だから幼稚園をガンガン休ませて山に連れて行く予定が、そういう訳にはいかなくなってくる。
私的には、幼稚園に落ちこぼれても、どうでも良いと思っているんですが、先生の立場としては、そうではない。もし、担任の先生が、たいしたことの無い先生ならば、無視して休ませたんですが、先生は一生懸命なんですよ。そういう先生には、刃向かえない。
そのうえ最悪なことに、嫁さんがついうっかり、休館だったはずの10月の連休直後にお客さんの予約を入れてしまった。10月の連休直後に1週間くらい休館して、息子を槍ヶ岳に連れていく予定だったんですが、それができなくなりました。
実は10月の連休直後から北アルプスには雪が降ります。そのために上高地から槍ヶ岳の間にある山小屋の多くは閉鎖されます。だから、息子を連れて槍ヶ岳に上ろうと思ったら10月連休直後でないと無理なのです。それ以前だと山小屋が大混雑で3歳児を連れて泊まること自体に無理がありますし、夏は商売の関係で無理です。
かといって6月には残雪がありますし、7月は天候が不安定。9月は秋の長雨シーズンなので無理だし、11月になれば吹雪と小屋じまいで無理。チャンスがあるとすれば10月の連休直後しかなかったんですが、嫁さんがついうっかり、うちの宿にお客さんの予約を入れてしまった。
それを知ったとき、目の前が真っ暗になってしまいました。落胆のあまり2・3日ぐらい食事が喉に通らなかったくらいです。よほど嫁さんだけを宿に残して、私と息子だけで槍ヶ岳に行こうかと思ったんですが、それもかわいそうなんで、槍ヶ岳は諦めて八ヶ岳に頭を切り替えました。八ヶ岳なら山頂の山小屋は11月の第1週目まで営業しています。雪も遅いので間に合うのです。
八ヶ岳(赤岳)は三千メートル級の山で頂上付近はかなりの岩場ですから相手に不足なし。おまけに山頂から見る富士山が美しく甲府の夜景も魅力。槍ヶ岳に比べてアプローチが短いし、山小屋も密集しているので万が一吹雪になっても避難しやすい。幼児連れには安全なルートともいえる。そう考え直して、八ヶ岳にチャレンジするために特訓をはじめました。
9月は5回。10月は15回の2000メートル級の山に登山をしています。低い山や、浅間牧場・シャクナゲ園・浅間園などを含めれば、もっと登っています。さすがにこれだけ登ると息子は日に日にたくましくなっていきます。
ただ、幼稚園からのクレームが増え、嫁さんの機嫌も悪くなります。私的には、幼稚園に落ちこぼれたっていいじゃないかと思うんですが、嫁さんは不満たらたら。
運動会でかけっこすれば、いつも一番後ろを走っているし、日常会話もスムーズではないし、親しいお友達がいっぱいいるわけでもない。いつもお友達からワンテンポ遅れて行動しているのが不安でたまらないらしい。私は
「3月26日生まれなんだから仕方ないよ」
と無視するんですが、
「だからこそ幼稚園も休んではいけないの」
「バカバカしい」
と夫婦で口論になったりします。
そもそも幼稚園の優等生になったところで、あまり意味がないと思っているんですが、他の人はそういう考えではないらしい。優等生なるよりも、3歳で自分の力で八ヶ岳に登山したという事実の方が、はるかに得るものが多いし将来の自信につながるはず。「優等生なんてくそ食らえ」と言いたいけれど、世の中の圧力も無視しがたいので、午前中だけ幼稚園に行かせて午後12時30分から山に行くことにしました。だから10月以降は、主に午後に山に登っています。
しかし、それさえも先生から13時まで幼稚園で勉強させてほしいということになり、それが13時30分まで勉強させてほしい・・・と、ズルズル引き延ばされてしまいます。その結果、登山開始時間は、どんどん短くなって、14時30分からの登山になる。
登山家なら分かると思いますが、10月・11月は日照時間が短いし、熊の活動時期とかぶるから、14時30分からの登山は危険もいいところです。そもそも山屋の常識から14時30分からの登山はありえない。その時間には下山しているべき時間です。
おまけに日没の関係で16時30分までに下山をおえないといけないので、息子の早足の負担をかけることになる。もちろん早足を強制しても、足がはやくなるわけではないので、苦労の連続でした。
それはともかくとして、ここで3歳児の山登りに関するコツを述べたいと思います。
2歳児の山登りですでに7つのポイントを述べています。
(1)飽きさせない
(2)自分の力だけで登ったと錯覚させる
(3)褒めまくる
(4)報酬を与える
(5)装備を調える
(6)山を歩かせない
(7)音楽の手を借りる。
これらの7つのポイントは、そのまま3歳児にも当てはまりますが、 3歳6ヶ月ぐらいになると、かなり体力もついて、大人と同じレベルの山に登れますから若干の補足があります。
(8)栄養補給を欠かさない
2歳児の頃は、4時間ぐらい山を歩いた直後に爆睡することが多いのですが、3歳児は大人顔負けの体力と持久力を持っています。そのためには、水分・栄養・アミノ酸飲料の補給をこまめに行う必要があります。特にアミノ酸の補給を怠ると、がくんと体力が落ちてきます。もちろんビタミンとカロリーも重要です。
標高2000メートルから3000メートルクラスの山は、1日に8時間ぐらい歩き続けますから、栄養と水分補給には細心の注意が必要です。1回の登山でアミノバイタルproを3個。大人の補給量を少量ずつこまめに飲ませないといけないので、チューブタイプでゼリー状のものを使います。
(9)目的を設定して報酬を用意する
3歳児は、 2歳児以上に報酬に敏感です。私は、主にグリコのプリッツを少しずつ与えています。プリッツを3等分にして十メートルごとに与えれば、一つの山に1箱も使いません。十メートルくらい先にすすんで待っていてお菓子やゼリーをもって笑顔で待っていると、嬉しそうに前進してきます。そして息子が追いついたら
「偉いなあ」
と褒めながら御褒美をあげる。それを繰り返すことによって体力がアップしますから、体力にあわせて十メートルを二十メートル。そして三十メートルと延していきます。
御褒美も、飽きられないように毎回かえていきます。プリッツも毎回味をかえ、チョコ・チーズケーキ・イチゴ・サツマイモ・羊羹・甘栗といったサプライズを用意すると、さらにテンションがあがります。注意しなければならないことは、ごく少量ずつ与え、もっと食べたいと思わせる。そのうえで一緒に「美味しいね」と語り合って共感し合う。そして次の目標を決めて
「今度は、あそこで食べよう」
と奮い立たせます。忘れてならないことは、食べさせる前に褒めること。あくまでも御褒美としてあげる。ただあげるだけでは、歩かずに駄々をこねるようになるからです。
(10)登山者と挨拶をしあう
声も大きくすると良いかもしれません。親が、すれ違う人に大きな声で「こんにちわ」と挨拶すれば、子供も真似をします。山には多くの中高年登山者がいますが、3歳児が元気よく挨拶をすれば、誰もが好意的に挨拶を返し励ましてくれます。これが3歳児のポテンシャルをあげてくれます。
幼稚園などでは挨拶を非常に重視して教えるのですが、現実世界では見知らぬ人同士で挨拶することはありません。ところが山では、幼稚園と同じように誰もが挨拶をしあうので、3歳児にとっては、山の風習は幼稚園とにていて親近感がわくようです。そして道をゆずれば、挨拶が休憩にもなりますから、喜んで挨拶をするようになります。
下山後は、できるだけすぐに温泉に入るといいです。2歳児の時は、すぐに爆睡して温泉どころではありませんが、3歳児になると温泉に入る余裕がでてきます。温泉に入れると回復がはやいです。毎日でも山に登れるようになります。午前中に幼稚園に行かせ、午後から浅間隠山などに登山して、そして温泉に入るというパターンを続けられます。
(11)ルートに注意
3歳児にとって苦手なものは岩場と鎖場です。逆に得意なのが階段やハシゴ。大人もビビる鉄ハシゴも3歳児は難なく登りますが、これは公園のジャングルジムやハシゴでなれているからでしょう。逆に岩場や鎖は日常生活に存在してないので戸惑うようです。
ただし岩場を体験すると、教えてもないのに3点確保をするようになりますから、体力だけで無く運動能力も向上します。しかし大人の速度についていけません。逆に階段とハシゴは、なれてくると大人と同じ速度で歩けるようになります。それを考えて登山ルート選びするとよいでしょう。
岩ばかりのルートは、大人にとっては楽ですが3歳児にはきつい。逆に大人が苦手な階段は、3歳児にとって登りやすい。だから普段と発想を変えてルートを決める必要があります。
(12)登山靴を買う
あと、3歳児になると登山靴のサイズがあうようになります。ノースフェイスから、16.5cmが出ていますし、他からも17センチの登山靴をだしています。それらに中敷きをたすと1センチ小さくできますから、15センチの足なら中敷きを2枚入れて厚手の靴下で履けるようになる。
登山靴を履けれれば滑りにくいし、岩もヒョイヒョイと登れるようになります。ただし子供が調子に乗りやすくなるのでそこは要注意です。以上、12点のコツを述べてみました。
つづく。
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