今回は遠足の話。
子供園のときも遠足はあったのだが、親が同伴だった。親が一緒ということは、親の財布も一緒についてくるのと一緒で、おやつも、昼食も、お土産も、親の管理下のもと、自由になるのである。しかし小学校の遠足は違う。親はいないのだ。
で、息子の奴は、遠足計画書を作って私に見せた。そこには、おやつの種類や、弁当のおかずなどのメニュー表が細かく書かれてあり、このとおりのメニューを用意してくれと言ってきた。それをみた私は大爆笑してしまった。なんと細かいことか。
息子の奴は、こういうところがある。毎日、母親に手紙を書いたり、日記を書いたりする。SFまがいのものを書いたりもするが、今回は遠足計画書ときているから、腹がよじれるほど笑ってしまった。
話は大きく変わるが、小学校に入学すると同時に、息子の奴に財布と貯金箱を買って与えた。そして、手伝いなどの労働・勉強などに対して10円ずつ支払うようにした。そして、店に連れて行き、自分の小遣いで買い物をさせたりした。ファイナンシャル教育のためである。
息子の奴は、金が貯まるたびに、私と一緒に買い物に行き、安い駄菓子を2つ買って、一つは自分のものにし、一つは私に分けてくれた。まさか6歳の息子に駄菓子を奢られるとは思ってなかったので、さすがの私も涙を堪えるくらいに感激し、有難く頂戴した。
しかし、あまり感動してばかりいられない。息子の性格からしたら誰にでも奢ってしまいそうだからだ。まだ、お金の価値・恐ろしさを充分に理解してないからだ。なので、
「お金は自分のために使いなさい」
「お金を貯めたら、もっと好きなものが買えるよ」
「お金が貯まっていくと、楽しいよ。お金持ちになれるかもよ」
とアドバイスしたら、アッとい間に守銭奴ぽくなってしまった。しかし、それはそれでいい。10円ほしさに手伝いでも運動でも勉強でも何でもするからである。以前は、おやつで釣って登山させていたが、これだと太ってしまう。10円ですむなら、そっちの方がいい。コストも下げられる。
話を戻す。
遠足の話である。
息子は、遠足計画書を作って、弁当のメニューや、おやつを細かく指定してきた。私は大爆笑したのだが、息子は、どうして爆笑したのか不思議そうだったので、それを分からせるために、スーパーに連れて行き、遠足に持って行く、おやつを3つ選んできなさいと言った。
息子は、難しそうな顔をしながら30分もかけて、やっと3つ選んだ。
よくみたら、どれも安い駄菓子ばかりだった。
そしてレジに並んだら息子の顔が真っ青になっていた。
「お父さん、財布を忘れちゃった」
どうやら息子は、遠足のおやつを自分の小遣いで買うつもりだったらしい。どうりで、安い駄菓子しか選んでないはずである。
「大丈夫、今回はお父さんが支払うからね」
そして、家に帰ると息子の奴は、『遠足おやつ計画書』を作っていた。
「遠足おやつ計画書? どうして、そんなもの作るんだい?」
「だって、おやつは3つしかないから、いつ食べるか計画をたてておかないと、最初に全部食べてしまったら、あとが大変でしょ?」
また爆笑してしまった。
「そんな心配しなくていいんだよ」
「どうして?」
「おやつは、3つだけじゃないんだ」
「どうして?」
「明日、リュックをあけてごらん。おやつが増えているから。お弁当もね」
「?」
「遠足は、タケちゃんの計画書だけじゃないんだ。お父さんの『遠足計画書』も追加されるんだよ。世の中、自分の計画どうりにいかないのさ」
「・・・」
「ま、明日のお楽しみということで・・・」
こうして私は、息子の計画を破壊してしまった。
私は息子のおやつを、密かに買っていて、それをリュックに入れて置いたのである。
おやつは、3倍の10個に増えていた。
もちろん弁当のメニューも息子の指定より豪華になっている。
旅の楽しみは、こういうハプニングにある。
計画どうりの旅なんてつまらないのだ。
つづく。
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