で、これと似たケースが、軽井沢でもおきています。やはり5月から6月にかけてで、山菜とりの人が軽井沢でツキノワグマに襲われています。どうして山菜採りの人が襲われるかというと、クマは、自閉症的に、確保した物や場所を保持しようとします。そこにライバルがやってくると、ライバルを排除する習性があります。
このへんは群馬の人には分かりにくいところですが、長野県・秋田県の山菜採りの人は、趣味で自分が食べるために採ってるというより、業者さんのように大量に山菜を採る人たちで、そういう人たちが自分のテリトリーを荒らし回るわけですから、クマたちは怒って排除するのがツキノワグマです。
一般的に言ってクマは、エサをみつけたら、そこから動かずに食べ続けます。朝から晩まで食べてないと、あの巨体を維持できません。そのうえ山菜は、食べられる時期というか瞬間が短いですから、余計に争って食べます。それを横取りしようとする奴が現れたら怒るのが当然です。
また、この時期は、発情期のちょっと前に当たり、オスクマは、体力を蓄えなければなりません。人を襲って大惨事になるのは、このオスの方です。十和利山熊襲撃事件における4人の犠牲者のうち3人を襲ったとみられているクマもオス(84キロ)で、4歳だったといいます。
あとクマは藪漕ぎが好きでは無く、開けた平原や林道や登山道を好みます。だから山菜採りの人とかち合うことも多いわけです。私も鼻曲山で何度もクマに会ってますが、姿を見ることはあまりなく、藪の中にいるのを確認することが多いです。私たちが登山道を歩くと、先に気がついたクマが、藪に隠れているわけで、藪をミシミシ言わせて大きな黒いものが動いているのがみえたり、藪が動いているのがみえたりする。こういう時は、かならずにおいがします。で、私たちが去って行くと、クマも登山道にもどって、食事を再開始めるわけです。もし、私が、そこに留まって山菜を採っていたら襲われた可能性があります。
こういうことが何回か続くと、こちらも知恵がつきますから、登山道では時々、絶叫するようになりました。絶叫して登るとクマの気配が消えるからです。クマ鈴ではダメです。あれは高音域ですから。犬でもそうですが、「キャンキャン」といった高音域は、「負けました」という意味なので、鈴をつけるならクマ鈴では無く、低音域のカウベルがいいでしょう。でも、そんなもの重たくてしょうが無いので、男のドスのきいた絶叫が一番です。
ここでヒグマの話に変わります。
知床のヒグマです。
知床では、1990年頃までヒグマの姿を見ることがなかった。1990年頃から、やたらと出没するようになります。原因は単純明快で、ヒグマの密猟者が、その頃を境にいなくなったからです。これは地元では有名な話で、密猟者が消えたらクマも安心してでてきた。
密猟者は、船でヒグマを探します。だから海岸に用心深いヒグマが出ることはなかったのです。ところが一人の密猟者が事故で亡くなり、もう一人の密猟者が老齢で引退したとたん、クマたちが山から下りてきました。そして自然保護活動が盛んになり、知床はクマの楽園になり、クマはじゃんじゃん増えていった。そして石を投げたらクマに当たるほど増えていった。
この間、たったの10年です。
クマの繁殖力は、すごいの一言です。
私は、1996年に知床半島に一ヶ月ほど潜入していましたが、37頭ほどヒグマに出会ってます。そのうち二回は、1メートルの至近距離で、立ち上がって威圧してきたクマを大声(低音の絶叫)で追い払ったことがあります。仲間が逃げようと言ってきましたが、意味が無いので逃げずにテントをはり、火を燃やして、夜中ラジオを流しました。もちろん手にはクマスプレーとナタをもっています。
その夜のことです。
アトランタオリンピックのサッカーで、日本がブラジルを破ったのは。
マイアミの奇跡をラジオで聞きながら満天の星を眺めていました。
つづく。
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