2020年09月27日

北軽井沢のツキノワグマについて その2

 ツキノワグマによる人身事故で一番有名なのは十和利山熊襲撃事件だと思います。これはどういう事件かと言うと、 、2016年 (平成28年) 5月20日から6月10日にかけて、秋田県鹿角市の十和利山山麓で発生した事件で、ツキノワグマが山菜採りに来ていた人を襲って4人が死亡、4人が重軽傷を負ったというもので、ツキノワグマにおける最悪の獣害事件で、非常に珍しいケースです。襲ったのはオスです。





 で、これと似たケースが、軽井沢でもおきています。やはり5月から6月にかけてで、山菜とりの人が軽井沢でツキノワグマに襲われています。どうして山菜採りの人が襲われるかというと、クマは、自閉症的に、確保した物や場所を保持しようとします。そこにライバルがやってくると、ライバルを排除する習性があります。

 このへんは群馬の人には分かりにくいところですが、長野県・秋田県の山菜採りの人は、趣味で自分が食べるために採ってるというより、業者さんのように大量に山菜を採る人たちで、そういう人たちが自分のテリトリーを荒らし回るわけですから、クマたちは怒って排除するのがツキノワグマです。

 一般的に言ってクマは、エサをみつけたら、そこから動かずに食べ続けます。朝から晩まで食べてないと、あの巨体を維持できません。そのうえ山菜は、食べられる時期というか瞬間が短いですから、余計に争って食べます。それを横取りしようとする奴が現れたら怒るのが当然です。

 また、この時期は、発情期のちょっと前に当たり、オスクマは、体力を蓄えなければなりません。人を襲って大惨事になるのは、このオスの方です。十和利山熊襲撃事件における4人の犠牲者のうち3人を襲ったとみられているクマもオス(84キロ)で、4歳だったといいます。





 あとクマは藪漕ぎが好きでは無く、開けた平原や林道や登山道を好みます。だから山菜採りの人とかち合うことも多いわけです。私も鼻曲山で何度もクマに会ってますが、姿を見ることはあまりなく、藪の中にいるのを確認することが多いです。私たちが登山道を歩くと、先に気がついたクマが、藪に隠れているわけで、藪をミシミシ言わせて大きな黒いものが動いているのがみえたり、藪が動いているのがみえたりする。こういう時は、かならずにおいがします。で、私たちが去って行くと、クマも登山道にもどって、食事を再開始めるわけです。もし、私が、そこに留まって山菜を採っていたら襲われた可能性があります。

 こういうことが何回か続くと、こちらも知恵がつきますから、登山道では時々、絶叫するようになりました。絶叫して登るとクマの気配が消えるからです。クマ鈴ではダメです。あれは高音域ですから。犬でもそうですが、「キャンキャン」といった高音域は、「負けました」という意味なので、鈴をつけるならクマ鈴では無く、低音域のカウベルがいいでしょう。でも、そんなもの重たくてしょうが無いので、男のドスのきいた絶叫が一番です。


 ここでヒグマの話に変わります。
 知床のヒグマです。

 知床では、1990年頃までヒグマの姿を見ることがなかった。1990年頃から、やたらと出没するようになります。原因は単純明快で、ヒグマの密猟者が、その頃を境にいなくなったからです。これは地元では有名な話で、密猟者が消えたらクマも安心してでてきた。

 密猟者は、船でヒグマを探します。だから海岸に用心深いヒグマが出ることはなかったのです。ところが一人の密猟者が事故で亡くなり、もう一人の密猟者が老齢で引退したとたん、クマたちが山から下りてきました。そして自然保護活動が盛んになり、知床はクマの楽園になり、クマはじゃんじゃん増えていった。そして石を投げたらクマに当たるほど増えていった。

 この間、たったの10年です。
 クマの繁殖力は、すごいの一言です。





 私は、1996年に知床半島に一ヶ月ほど潜入していましたが、37頭ほどヒグマに出会ってます。そのうち二回は、1メートルの至近距離で、立ち上がって威圧してきたクマを大声(低音の絶叫)で追い払ったことがあります。仲間が逃げようと言ってきましたが、意味が無いので逃げずにテントをはり、火を燃やして、夜中ラジオを流しました。もちろん手にはクマスプレーとナタをもっています。

 その夜のことです。
 アトランタオリンピックのサッカーで、日本がブラジルを破ったのは。
 マイアミの奇跡をラジオで聞きながら満天の星を眺めていました。


つづく。

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posted by マネージャー at 19:36| Comment(0) | 自然−動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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