ご飯と味噌汁を大盛りでおかわりすると、 体調が良くなりました。
計算すると今日1日で、6000カロリー以上を消費したことになりますので、夕方になるとどうしてもガタガタ寒さに震えるようになります。これは気温が低いわけではなくて、カロリーが足りないからなんですよね。なので山小屋では、ご飯を大盛りにしておかわりします。味噌汁もおかわりする理由は、塩分が足りないからです。すると、さっきまで背筋が寒かったのが嘘のように体がポカポカと温まってきます。チョコレートやミックスナッツのような行動食では、このように体がポカポカと温まることはありませんから、ご飯と味噌汁は偉大ですね。
ところで新型コロナウイルスによって山小屋の常識が、かわりつつあります。昔は、見知らぬ登山家たちが、旧知の友人のごとくお互いに山を語り合ったものですが、新型コロナウイルスによってソーシャルディスタンスをたもつようになり、だれとも会話しなくなりました。酒盛りはもちろんのこと、会話も最小限になり、みんなマスクをして話します。食事も対面でしません。全員、一方方向をむいて食事をします。もちろん外国人も減ってるので、マナーを知らない人たちもいなくなっている。そういう時代になってます。
ちなみに明日の朝食を取るかわりに、お弁当を頼んでいます。山小屋では、朝食をお弁当に変更することができます。早朝に出発したい登山家たちが多いからです。
問題はこの後のことです。この事件は、本当ならブログに書くつもりはなかったんですが、本社にメールをしようにもメールアドレスはなく、電話をしても電話が通じなかったので、ここに書くことにします。
食後しばらくすると、何やらすごい大声が、18時半頃から山小屋の中に響き渡りました。一人の声ではありません。10人以上の人々が宴会騒ぎをしているのです。山小屋では、15時ぐらいから寝ている人がいます。だから良識ある登山家たちならみんな静かにいるんですが、最近は外国からのお客さんも多いために、この一般的なルールが守られないこともある。で、下の写真のように、山小屋の至る所に静かにするように張り紙が貼られています。
しかし、その団体さんは、そんな常識などどこ吹く風で、山小屋中に響き渡るものすごい大声でどんちゃん騒ぎをしまくっていました。これでは眠ることもできない。仕方がないので、しばらくの間、2階の談話室で読書でもすることにしました。20時すぎになれば、いやが応でも消灯になります。非常灯を除いて建物内の全ての電源が落ちてしまいます。そうなれば静かになるだろうと思ったからです。
しかし、どんちゃん騒ぎは20時以降も途絶えることがありません。
これじゃあ眠れません。
登山家の常識としてあるまじき行為であることは間違いありません。
一体どうなってるんだろうと、私はベッドから起き上がり、どんちゃん騒ぎをしている団体さんのいる部屋を探し回りました。すると、探し回っていたのは私だけではなく、何人もの登山家たちが、ぞろぞろと探し回っていたのです。2階に上がって個室のお客さんの部屋を探し回ったり、外に出てテントを設営している所に行ってみたり、談話室に行ってみたり、槍ヶ岳山荘のありとあらゆる所に行ってみたんですが、どこからも声はしません。
「おかしいな、一体どこから声がするんだろう?」
と、 不思議に思いつつ、一番大きく聞こえる場所を探してうろうろするんですが、一番聞こえるのは、1階にある私たちが寝ている相部屋なのですよ。しかし、相部屋でどんちゃん騒ぎしてる人たちは誰もいない。みんな静かに眠っている。静かに眠っているのにどんちゃん騒ぎが聞こえてくる。もちろん相部屋の2階には、個室があるんですが、そこも静かにしている。 だから不思議でならなかった。一体どこから声がするんだろう?
そうこうするうちに、眠れずにいた相部屋の登山客がぞろぞろぞろぞろ起き出してきました。そして、みんなあちこちを探し回り始めたのです。しかし声の主の姿の正体はさっぱり分からない。
「幽霊なのか?」
「遭難した人が霊になって現れて酒盛りしているのか?」
「いやいやいや・・・・」
と狐につまされること数十分。
「世の中には不思議なこともあるもんだ」
と思いつつ、首をかしげていると、
「ここだよ」
と、声の正体を突き止めるお客さんがいました。
「どこですか?」
「地下の食堂から声がする」
「え?」
「山小屋のスタッフが酒盛りをしてるみたいだ」
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
多くの登山家たちが寝ている部屋の下に食堂があります。そこで私たちは17時に夕食を食べたのですが、その食事の後片付けを終えたスタッフたちが、酒盛りをしてるらしいのです。しかも、私たちが寝ている真下が厨房だったようで、そこから直に声が丸聞こえだった。その上、食堂に向かう階段にはバリケードがあって、立ち入り禁止になっている。
どうする?
どうにもならないな?
他の登山家たちは、みんな朝食をとっているので、山小屋のスタッフたちに注意するにも注意しにくい状態です。
それにしても最低なスタッフたちだね。
こんな山小屋初めてだ。
こんなことが囁かれている。おまけに私と同室の人たちの中には、高度障害で苦しんで、15時ぐらいからずっと寝込んでいるけど、寝られないで困っている。 そもそも新型コロナウイルスで、登山家の人たちは無口になっている。どんちゃん騒ぎになんか、するわけがない。みんな新型コロナウイルスを怖がっている。
山小屋の伝統として、見知らぬ人同士でも山を語り合って、すぐに溶け込むのが、登山家たちの文化でもあるのですが、新型コロナウイルス以降は、他人と語らなくなっている。ましてやどんちゃん騒ぎなんてする訳が無い。
ソーシャルディスタンスを保つために 会話は最小限にしなければいけない。マスクをしてなければ、マスクをしてくださいと注意されるのが今の時代です。現に私もマスクをせずにトイレに入ったために注意されている。そういう時代に、どんちゃん詐欺なんてありえない。ましてや山小屋のスタッフが、お客さんに迷惑をかけて酒盛りなど言語道断です。翌日、気まずい思いをしたくないから注意するにも注意できないからです。
で、皆さんも困っている中で、私だけが朝食を取ってない。仕方がないので自分が犠牲になることにしました。立ち入り禁止のバリケードを外して下にどんどん降りていった。他のお客さんは、私の後ろからついてきました。で、厨房の方に向かうと、十数人の山小屋スタッフが、日本酒をずらりと並べてマスクもせずに酒盛りをしている。
「マスクもなしかよ」
「クラスターおこしたらどうするんだよ」
と思いつつ
「何やってるんですか、うるさくてお客さんが寝られませんよ。上で寝ている人たちは怒っていますよ」
と注意するわけですが、一人だけが「すいません」 というだけで、 みんな黙りこくっている。と言うかシラケている。いやいや、ここは全員で一斉に謝る所でしょ。お客さんがここまでやってくるというのは、余程のことだと思わないといけないでしょう。どうみても反省の色がない思った私は、と思うと私は頭に血が上って、
「いいかげんにしろ!」
と怒鳴って部屋に引き上げてしまった。
おまけに、その直後にブレーカーが落ちて非常灯さえも消えてトイレが真っ暗になり、そこから命がけで生還してきた御客さんもいたらしい。まったく危ないたらありゃしない。こっちには7歳の子供がいるというのに。こんなことして、snsに書かれるとか、環境省とか観光協会とか他の諸団体にクレームが行くとは考えられないのかな?と不思議でなりません。
翌日、下山している時に、うちの嫁さんが
「昨日の夜、非常識な団体さんがいたよね。登山歴30年ぐらいのベテラン登山家に怒られていたのに気がついた?」
と聞いてきました。
「あのどんちゃん騒ぎは、非常識の団体さんだと思ったわけ?」
「うん」
そうだろうな。 間違えても山小屋のスタッフがやったとは誰も思ってないだろうな。しかし昨日泊まった登山家の人たちにそんな奴はいない。あの悪行が登山家のせいにされているとしたら、昨日泊まった人たちの名誉にも関わることだから、この件は、しっかり記録しとかないといけないなと思って、このブログに記録しておくことにしました。ちなみに嫁さんは、あの声の正体が私だと知って大笑いしていました。 ちなみに私の登山歴は40年ですから。
つづく。
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たまたまこのときのスタッフが不心得だったのだと思いたいですが、小屋も大きくなるとスタッフのレベルが下がるのかなぁ。