2021年03月10日

徒歩旅行の思い出【1】礼文島

 今から30年ぐらい前の話です。私は北海道の礼文島を旅しました。そこには愛とロマンの8時間コースと言う海岸の岩場を歩くルートがあって、高山植物のお花畑がとても綺麗な場所でした。 そういう場所を8時間かけて歩くのですが、若い男女が8時間かけて歩けば、そのうちに愛が生まれるらしい・・・と言う噂があり、それを『愛とロマンの8時間コース』と言いい、若者が集まってきていました。いわゆる昭和時代の出会い系です。

 当時、 礼文島には、礼文ユースホステル。桃岩ユースホステル。船泊ユースホステルの3件があって、それぞれ特色を出していました。桃岩ユースホステルは、どんちゃん騒ぎで有名でしたし、カップルが生まれることで有名なのが船泊ユースホステルでした。何も特徴のないのが礼文ユースホステルでした。





 そんなことも知らなかった私は、カップル伝説の船泊ユースホステルに泊まったわけですが、船泊ユースホステルの食堂には、そこでカップルになった人たちの写真が食堂にずらりと並んでいました。少なくとも50組くらいあったと思いますが、下手したら100組ぐらいあったのかもしれません。それだけの数のカップルの写真が食堂の壁にずらりと並んでいて、しかもカップルになったご夫婦が何組も毎日やってきていました。

「こりゃまた、偉いところにきたな」

と驚いた私は、早速、愛とロマンの8時間コースを同じ宿に泊まっている30人ぐらいの若者たちと一緒に歩いたんですが、 当然のことながら、そんなに簡単に愛が生まれるわけもなく、翌日は海驢島という無人島に渡ってバーベキューを楽しみました。次の日は礼文岳に登り、その次の日は船泊の街を散策したり、一週間ぐらいにわたって、のんびりと過ごしたものです。

  ところが、毎日休まずに、ただひたすら愛を求めて何連泊もしながら『愛とロマンの8時間コース』を歩く男がいました。真剣に愛を探していた男がいた。その人に対してみんなは「愛が生まれたかい?」 と冷やかしのですが、毎日悲しそうに首を振っていました。それをネタに酒を飲んでは「そんなに簡単に愛が生まれるかよ」と、酒の肴にしてからかったものですが、その人はそれでもめげずに、何日も愛とロマンの8時間コースを歩いていました。

「馬鹿な奴だなあ」

と、みんなは陰口を叩いていたんですが、その人は雨が降ったときも愛とロマンの8時間コースに出かけた。その時は誰も参加者がいなくなって、男一人で出かけていった。それを聞いた私たちは

「男だ!」
「奴こそは本物の男だ!」

と褒め称えるようになり、 みんな彼を応援するようになっていました。 私はその後に利尻島に移動したんですが、その利尻島でも彼の情報は届いており

「10日連続して愛とロマンの8時間コースを歩いた奴がいる」
とか
「20日連続して愛とロマンの8時間コースを歩いた奴がいる」
とか
「30日たっても愛が生まれなかった奴がいる」
といった噂が北海道中に流れてていました。その噂が本当だったのか? 単なる噂だったのかは、定かではありません。

 話は変わります。8時間かけて歩くのも大変なんですが 、 礼文島には愛とロマンの24時間コースというのもあって、それを企画している宿がありました。確か星観荘という宿でした。

 私は、24時間コースというのに惹かれて星観荘に泊まりたかったんですが、 そこには女の子しか泊まってないと言う噂も聞いていました。女の子ばっかりだったら、ちょっといづらいなーと思った私は、どうしようか迷っていた。

 男ばかりの宿に、女性が一人の場合は、男はみんな女性に優しくします。けれど女性ばかりの宿に男が一人入っていくと、警戒されて男一人が孤立することが多い。数が多い女性はそんなに優しくありません。この法則は、旅行者の間では有名な都市伝説ですが、旅する女性たちに訴えたことがあるんですが、彼女たちはこう言いました。
「それを乗り越えるのが男というものや」
なるほど納得です。

 それはともかく船泊港を散策していたら、ちょうど船が出港する時で、20人ぐらいの若い女の子たちが、島を出て行く旅人の見送りで「落陽」の踊りを踊っていたのを目撃してしまった。星観荘の御客さんたちだった。その姿にビビった私は、星観荘に泊まるのはあきらめて利尻島に向かった。あの星観荘は、いまでも存在しているのだろうか? 地獄の24時間コースは、いまでもやってるんだろうか?



つづく。

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posted by マネージャー at 21:33| Comment(0) | 旅と思い出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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