2021年09月01日

かって、マイキットという高額な玩具があった

 私が子供の頃は、学研の「科学」と「学習」という雑誌があって、これが凄いものでした。特に付録が凄くて、機械式計算機が付録でついてきたり、ダイオードラジオの組み立てキットや、照度計のキット、プラネタリウム、電気配線ロボット、顕微鏡、化学実験セットなんかが付録についてきたりしました。昭和の子供たちは、それらの付録に熱中しました。電卓もパソコンもインターネットも無い時代でしたので、みんな科学キットに夢中になったものです。

 私が小学校1年になったとき、アポロが月面に着陸し、小学校2年生の時にドラえもんが連載スタートとなり、小学校3年生になった頃には、1970年の大阪万博があり、世の中は科学ブームにわきたち、当時の子供たちは少しでも科学の薫りのするものにあこがれ、熱心に科学雑誌を読みあさっていました。特に離島のド田舎に住んでいた私にとって、科学のかおりのするものと言ったら学研雑誌の『科学』しかなく、それを何回も読みあさっていました。

 で、その学研雑誌『科学』に掲載されていた広告が『マイキット』シリーズです。



 『マイキット』シリーズには、いろいろあって、安いものはマイキット20というのがあって、当時の価格で1500円もした。これは、電子部品の端子と端子をリード線で結ぶことにより、電子回路を作ることができる。マイキット20だと、20の電子実験ができました。トランジスタラジオを作る実験とか、ワイヤレスマイクとか、報知器といった製品を作って実験することができました。

 高いものにはマイキット200というのもあって、そのレベルになりますと、抵抗・コンデンサ・トランジスタが十個以上あって、それらを接続して、超高性能ラジオも作れたし、ステレオアンプ・電子オルガン・嘘発見器まで作れました。200種類の製品を作って実験できたのです。当時の少年たちは、みんな、これに憧れたけれど、高額だったので買ってくれる親などいませんでした。組み立てラジオは買ってもらえても、マイキットを買ってくれる親など皆無でした。

 そもそも当時の親世代(昭和一ケタ生まれ)にとっては、マイキットが何であるかも分かってなかったと思います。「電子部品の寄せ集めなんか買ってどうするんだ?」という感じだったと思います。買ったとしても小学生に、トランジスタとか、抵抗とか、コンデンサーが分かるのか?と思ったに違いありません。それらをつなぎ合わせると、変声器になったり、電子メトロノームになったりする魔法のボックスに対するワクワク感が、理解出来なかったと思います。大人にしたら完成品に価値があるのであって、部品の集合体には、何の価値もなかったことでしょう。





 ようするにマイキットは、当時の子供の贅沢な玩具だったにすぎなかった。それは間違いありません。友人にマイキット20をもっていた奴がいて、それを使わせてもらってラジオを作ってみましたが、苦労して作っても、感度は悪かった。というか、雑音ばかりで良く聞こえなかった。修学旅行で買った組み立てラジオのほうが、よほど放送が聞こえました。でも子供にとって、そんなことは、どうでもよくて、音が聞こえただけで満足し、せっかく作ったラジオを分解し、モールス信号機なんかを作り出したりしました。で、20個の実験が全て終わったら、もう見向きもしませんでしたから、考えようによっては、高価な玩具だったかもしれません。

 そして中学校に入り、技術・家庭科という授業が始まると、マイキット経験者と、未経験者の間に大きな差があることを知って愕然とする。マイキット経験者は、電子用語をすんなり受け入れることができたけれど、未経験者は、
「抵抗ってなに?」
「コンデンサーって美味しいの?」
という感じで、ちんぷんかんぷんだったようです。図面も読めないようだったので、実際の工作の時間にかなり苦労していたように思います。しかし、そのうちに慣れて、なんとかラジオを完成させていたようです。





 その後、高校に入ったとき、高校の物理部に入部しようと見学にいったら世の中が変わっていました。先輩は、時計を製作していましたが、もう電気配線は存在してませんでした。図面も存在してなかった。ICのボックスに全て集約されていて、単に組み立てるだけのしろものだった。ハンダも使われない時代になっていました。それをみた瞬間、急に興味を失ってしまいました。その頃には、マイキットも販売されなくなっていました。

 ところで令和時代の小学校では、プログラミングの授業があるらしい。プログラミングの授業って必要なんだろうか?と思っている私は、かって、マイキットを小馬鹿にしていた昔の親たちと同じ心境なのかもしれません。正直言って、プログラミングの授業やるくらいなら、山でも登って自然の中で実物教育をしたほうが、よほど子供のためになると思っているのだが、そういう考えは古い考えなんでしょうね。


つづく。

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posted by マネージャー at 22:47| Comment(2) | 雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
父が戦時中に通信兵になって技術を身につけ、戦後、ラジオやらアンプやらいろいろ作ったりしていました。当時のことゆえ、廃棄するジャンクから外した中古部品が、ちょっと見にはゴミ箱のような抵抗の箱、コンデンサの箱、真空管の箱という感じで段ボール箱にがさごそと入れられていました。
で、電子ブロックが欲しいと言っても、部品ならその辺にいくらでもあるから使え、と言われてしまい買ってもらえなかったというトラウマがあります。
Posted by Aki at 2021年09月05日 21:27
買ってくれる親はいませんでしたね。でも当時の子供にとっては、あれくらい欲しかったものはなかった。
Posted by 佐藤 at 2021年09月10日 01:58
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