2021年10月13日

クマについて【8】クマを飼う方法

 皆さんは動物園に行ったことはありますか? ありますよね。動物園に行くとクマのコーナーがあります。ヒグマ、ツキノワグマ、ホッキョクグマといろんなクマたちがいますけれど、それらを収容しているところは必ずコンクリートでできています。そして巨大な壁で囲われていて、上から下に俯瞰するようになっています。世界中の動物園、どの動物園に行っても同じような構造になっています。どうしてそのような構造になっているか考えたことがあるでしょうか? これについてはNHKの「チコちゃんは知っている」で、一度やってもらいたいものです。





 答えはとてもシンプルです。クマだったは、穴掘りの名人だからです。もう一つ言うとロッククライミングの名人でもあります。だから垂直の壁で覆われています。昭和33年にできた登別のクマ牧場では、最初の頃は、牧場の中に木がたくさんありました。サファリパークのように、自然の中で生きている姿をお客さん達に見せたいと思ったからです。

 ところがクマ達の食欲は旺盛で、笹でもなんでも春先に芽が出る前に土をほじくり返して食べてしまう。きちんと餌をあげているにも関わらず土を掘って食べてしまうから3年ぐらいで全ての植物が全滅してしまった。もちろん樹木も全て枯れてしまう。理由は冬眠前に樹木の皮を食べてしまうからです。餌があるにも関わらず食べてしまう。これには理由があって、冬眠前のクマは肛門に蓋をする必要がある。そのためには発酵しない食べ物がどうしても必要になってしまう。

 発酵しない植物で肛門に蓋をしなければ冬眠ができないために樹木の皮を剥いで食べたりする。昭和30年頃にはそういうことがわかっていなかったために、あっという間に樹木は枯れてしまった。そういったわけで世界中のどこの動物園に行ってもクマを飼育しているところには植物がありません。みんなコンクリートで囲われている。そうしないと、どんどん穴を掘って逃げ出してしまうからです。

 登別のクマ牧場ではこんな実験をやりました。クマ牧場の中に電気柵を作ってその中にクマの大好物のりんごを入れてみた。ヒグマたちはりんごを食べようとして電気柵に引っかかって感電してバタッと倒れてしまう。そうなるとクマ達は穴を掘ります。穴を掘ってりんごを食べてしまう。そこでコンクリートで穴を掘れないようにした。そしてりんごおいて実験をしてみたら、ヒグマたちはポールを押し倒してりんごを食べてしまう。りんごを守るには絶壁のような壁を作らないと駄目だということがわかった。

 ちなみに今から10年ぐらい前に、家の宿の近所(北軽井沢)にイノシシ牧場というのがあって、そこでツキノワグマを飼っていたんですが、そこでもコンクリートの地面におりをつけて飼っていた。コンクリートの地面でないと穴を掘って逃げ出すわけです。面白いことにそこでは子クマを放し飼いで飼っていました。放し飼いと言っても首輪が付いていて、首輪から大きなタイヤに鎖でつないであったわけですが、こぐまといえども力は強いわけで、タイヤをズルズル引きずり回して庭先で遊んでいました。それはもう可愛い可愛いものでした。こいつは凄いなあと感動した私は、お客さんに宣伝しまくったわけですが、いつのまにかイノシシ牧場は消えて無くなっていました。残念なことです。消えてなくなるとわかっていたら、毎日のようにそこに通って、ツキノワグマの生態を観察したのですか、油断してました。非常に惜しいことをしてしまったと今でも後悔しています。

 話を戻します。

 登別のクマ牧場のことを見ても、クマたちは片っ端から植物を食べてしまうわけですが、唯一食べないものがありました。トマトです。なんかの拍子に牧場の中にトマトの種が落ちてしまって、40センチくらいまでトマトの茎が伸びていることがあった。ところがどのクマもそれは食べないでいた。それどころかそれを避けて通る。それから長ネギピーマン玉ねぎなど匂いの強いものも食べるのを避ける。というわけでクマはトマトを食べないのではないかと仮説を立ててみたわけです。

 で、トマトの実をクマに与えてみたら、むしゃむしゃと食べてしまった。トマトの茎は避けるくせに、トマトの実は食べてしまうんです。ということは、何かの警戒心で食べなかっただけで、こいつは食べられると分かったら、トマトの茎でも食べるようになってしまうかもしれない。

 ところで、登別のクマ牧場に行ったことが、ある人は分かると思いますが、あそこに行くとクマ達が密集して生活しています。狭いところにぎゅうぎゅうづめにヒグマたちが住んでいる。これを不思議に思った人はいないでしょうか? クマというのは縄張りを持つ動物だと言われていました。野生のクマを観察するとクマというのは孤立性が高い。集団生活をしないわけです。そんな動物を集団飼育すると喧嘩するのではないかと思われていた。だからクマ牧場を設計するときに、一匹あたり何ヘクタールの土地が必要なのかと色々計算をされていたわけですが、いざクマ牧場をスタートしてみたら、どんなに密集になっても餌さえあれば全く喧嘩をしないことが分かった。逆に言うと餌が足りなければ餌を取り合って喧嘩をする可能性が高い。そうなるとクマも知能が高いので脱走を試みるかもしれない。

 このことは、非常に重大な示唆を与えてくれます。もし山のどんぐりが不作だった場合や、クマが増えすぎた場合は、山から下りてくる可能性がある。危険を冒してでも畑の中に入ってくる可能性がある。その場合電気柵があっても無駄だということだ。本当に飢えているクマならば穴を掘って畑の中に入ってしまうからだ。幸か不幸か北軽井沢には、どんぐりがたくさんある。家の近所を散歩するだけでも道端はどんぐりだらけだし、別荘地の森の中もどんぐりだらけで、朝散歩すると、どんぐりが別荘の屋根に落ちる音がポンポンと聞こえます。これをツキノワグマが食べない理由がない。逆に言うと、夜夜中にこっそり行ってきてクマ達が別荘の森でどんぐりを食べていても不思議はありません。


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 ただし、そういう事例がほとんどないのは、別荘の住人達が、犬が好きだからだと思う。例えばたぬきがやってきただけで、犬がワンワン吠える。そうするとあちこちの別荘をから連鎖的に犬の吠え声が聞こえてくる。野生動物にしてみたら、全く嫌な感じなのかもしれない。しかし、そういう犬たちをものともしない連中もいる。クマではなくイノシシ等です。彼らは犬なんか屁とも思ってない。




つづく。

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posted by マネージャー at 06:25| Comment(0) | 自然−動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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