どうして同時に10匹育てたか?
そして、どうして2度と育てなくなったのか?
そして、もう一つ。
10匹もいたツキノワグマから、なぜ1匹の子熊も生まれなかったのか?
これらの謎は、あとで話すとして、この宮崎さんによって、ツキノワグマの謎がいくつも解明されています。1匹の飼育では分からなかったことが、10匹同時に飼育することで分かってきた。
宮崎さんは、長野電鉄に勤めるサラリーマンでしたが、子供の頃からの熊好きがこうじて10匹の子熊を同時に飼うことを決意する。そのために庭にリンゴの木を何本も植えて、それが大きくなるのを待ち、二人の子供が成長するのを待って、子供たちが動物好きになるったことを確信したうえで、ツキノワグマを飼うことを宣言。親戚・親兄弟・奥さんの反対を粘り強く説得して、全国の動物園に子熊を譲ってもらえないかと交渉しました。で、全国から子熊が、どんどんやってきた。
で、ツキノワグマの子熊を育ててみたら、それぞれの個性が全く違う。恐ろしいほど違う。つまり生まれた環境によって全く違う個性になっていた。宮崎さんは、ぼやかして言って、はっきり言ってませんが、A動物園からきた子熊は、人なつっこくて甘えん坊で、賢い子熊ばかり。しかし、B動物園から来た子熊は凶暴だった。理由を調べたら、御客さんサービスのために食料を減らして冬眠を阻止したために凶暴になったとのこと。宮崎さんは、この凶暴な子熊に苦労します。
まあ、そんなことは、どうでもいいとして、何が言いたいかというと子熊は環境によって個性が全く違ってくるということです。つまり後天的な学習によって、いくらでも変化するのが熊の本質。非常に学習能力が高いことを、10頭同時に飼うことによって宮崎さんは発見しました。そして、その体験記録を本にして、偕成社の少年少女ドキュメンタリーの18巻として全国の書店にならびます。私は、高校生の時に、その本を買って読んだわけです。
偕成社といえば、「はらぺこあおむし」とか「ノンタン」で有名な児童向けの出版社ですが、50年前は、浜田廣介(ないた赤鬼)・いわさきちひろ(龍の目のなみだ)が有名で、私は幼児の頃に、母親に偕成社の絵本を買ってもらっています。うちの嫁さんが生まれた頃には、「カラスのパン屋さん(かこさとし)」なんががベストセラーになっています。
また、偕成社は高学年向きの本を出していて、当時ベストセラーだった少年少女ドキュメンタリーには
「第1巻・月へいくアポロ宇宙船」
「第2巻・ニューギニアに人食い部落を求めて」
「第3巻・ゼロ戦と戦艦大和」
「第6巻・昭和基地の越冬生活と極点征服」
「第13巻・戦艦物語」
というものがあって、当時の子供たちは、これらの本に熱中しました。その中に宮崎さんの本(ツキノワグマ日記)があったのですが、このツキノワグマ日記を主に読んだ人は、子供より大人たちだった。私のような動物好きの高校生や、当時の鉄砲猟師(ハンター)たちが、この本に驚愕し、夢中になり、宮崎さんと懇意になり、実際にツキノワグマをペットとして飼う人たちもあらわれた。で、彼らはツキノワグマをペットとして可愛がった。しかし、そのツキノワグマは、みんな短命で死んでしまう。
なぜか?
栄養が良すぎたからです。
マタギたちは、熊は粗食でエサを食べないという。
動物学者たちは、あの巨体を維持するために熊は大食漢だという。
どっちが本当なのか?
長い間、分からなかったのですが、
宮崎さんの10頭のツキノワグマの飼育で熊は本来粗食であるということがわかってきた。
熊にかぎらずイノシシなども粗食。熊は小さなアリを一日中たべているし、イノシシは栄養価皆無のミミズなんかをたべている。それで、あの体型を維持しているのだが、六甲山のイノシシのように餌付けされてパンなんか食べさせられると、急激に巨大化して、糖尿病なんかになってしまう。人間がよかれと思ってやったことが逆に作用する。これはツキノワグマも一緒で、人間の感覚で栄養価の高いモノを与え続けると、糖尿病になってしまう。
つづく。
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