そんなことありえん。
ただの転校生に違いない・・・・。
そんなことを考えている私のことなどお構いなしに転校生は、さかんに私に話しかけてきました。当時は、女の子から男の子に話しかけてくるという光景が珍しかったために、クラスの男子たちは、そんな光景を「ヒューヒュー」と囃し立てました。赤面して逃げ出しましたが、転校生はお構いなしに私のそばにやってきました。そんな彼女は目が大きかった。そして、じーっと人の顔をのぞき込む癖があった。それがまた、やりきれなくて私は何度か逃げ出してしまった。
幸いなことに彼女は、すぐに女友だちができました。私は「ホッ」として胸をなでおろしました。しかし、それにもかかわらず、その子は、私のところに寄ってこようとしました。他の女の子が
「佐藤なんかと口をきいちゃダメだよ」
と注意するにもかかわらず、それを振り切ってやってきました。そして彼女は必死になって私と何か会話をしようとするのですが、私は、ウンともスンとも言わなかったので、はずんだ会話は成立しませんでした。私が口を開いたのは1回きり。
「兄弟はいるか?」
「妹が二人いるけど」
「じゃ、3人兄弟なのか?」
「そうだけれど、どうして?」
「・・・・」
放課後、私は、学校を逃げ出すように、あの雪人形のところに行きました。そして、3体の雪人形をしげしげと眺めてみると、やはり目が大きかった。思わず小枝で目を小さく作りかえて病院に向かいました。病院の待合室で、ウソハチじいさんを待ち伏せしました。ウソハチじいさんは、すぐに現れましたが、私は声をかけることができなかった。
「雪ん子がでたかもしれない」
とは言えなかった。だからウソハチじいさんの後を尾行しました。しかし、下手くそな尾行のためか、すぐに相手に気づかれてしまい、ウソハチじいさんににらまれる結果になりました。
「出たのか」
「・・・・」
「そうか」
「・・・・」
ウソハチじいさんは、そのままサッサと歩き出し、私は、その後を尾行しつづけました。そして、ついにウソハチじいさんの家にたどり着いたのでした。そこは、茅葺きの農家の家で、庭先で白菜の漬け物をつけている御婦人がいました。病院で私を叱ってくれた御婦人でした。どうやらウソハチじいさんの親戚のひとのようでした。御婦人も一言、言いました。
「出たのかね」
「・・・・」
「そうか」
「・・・・」
「せっかくだ、お上がりなさい。いいよね、じいさん」
「ああ」
私はウソハチじいさんの家にあげてもらいました。
そして神妙にウソハチじいさんに尋ねました。
「どうして雪だるまなら良くて、雪人形はダメだったの?」
「だるまさんは、ずっと座禅を組みなさる。そして天地と一体となる。だから姿形を超越なさっている。雪が溶けたところで、天地と一体になった達磨大師さまにとっては、大したことではないのだよ。でも雪人形は、そうではない」
「雪人形なんか造らなければよかった」
「・・・・」
「今日、転校生がやってきたんだ。雪ん子かもしれない」
「アハハハハ、雪ん子は、転校なんかしない。安心しろ」
「だって」
「いずれ雪ん子は、消えていく。雪のある間に、ちょっとばかり悪戯をして消えてしまう。それが雪ん子の正体さ。これからお前は、雪ん子に悪戯されるかもしれないが、腹をたててはいかんぞ。優しく見守ってやることが大切だ」
「うん」
「それから、このことは、誰にも話してはならんぞ」
「どうして?」
「みんなからウソハチと呼ばれるからさ」
その時、私は酷く赤面しました。
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しかし、転校生が、雪人形だとすると…。
これから先の佐藤君と、雪ん子転校生の友情? もしくは…? の展開、ますます楽しみにしています。