「・・・・」
「どうして雪人形をつくると雪ん子がでるの?」
「さあな」
「春になって、雪が溶けると雪ん子は消えてしまうの?」
「さあな」
「あの転校生は消えてしまうのかな?」
「・・・・」
「消えてしまったら、どうしよう」
「どうして、そう思う?」
「だって、あの転校生は雪ん子なんでしょ?」
「雪ん子は、転校生なんかじゃない」
「でも」
「生身の人間が消えることはない。心配するな」
「だって」
「消えるのは雪ん子だ。人間は消えたりしない」
「あの転校生は、雪ん子じゃないってこと?」
「そうだ」
ウソハチじいさんは何か隠している。
そう思いました。
どういうわけか嘘をついている気がしました。
というのも私の隣の席に座っている転校生は、本当に不思議な女の子だったからです。何が不思議かというと、消えたと思うと、すぐ目の前に現れたりしたからです。隣の席なので教科書を見せ合ったりもしましたが、その時に、あの大きな目玉でジーッと見つめられたかと思うと、催眠術にかかったように睡魔が襲ってきて、気がついたら、あの雪人形の前で目が覚めていたりしたからです。
「あれ? なんで俺、ここにいるんだろう?」
雪人形は、溶けかかっていました。
気味が悪くなった私は、大急ぎで逃げて帰りました。
そして翌日。私は重い気分で学校に行くと、私より早く、あの転校生が席についていました。教室に入ると、彼女は、あの大きな目玉でじっと、私を見つめられました。私は、目線をそらしながら自分の席につきましたが、気がつくと、転校生は消えていなくなっていました。それにホッとして、鞄から教科書をとりだとうとすると
「どうして逃げたの?」
と転校生の声がしました。
「うわっ!」
と驚いた私は、椅子から転げ落ちましたが、転校生の姿はどこにもありませんでした。
「どうした佐藤?」
「転校生は?」
「転校生? そういや今日は来てないな」
「なにいってるんだよ、さっきまで、ここに居ただろうが」
「はあ?」
「机に座っていたよな」
「いや、誰も机に座ってなかったと思うぞ」
「・・・・」
結局、その日に転校生を見た人間は、私一人でした。
彼女は、風邪をひいて欠席したとのことでした。
その日は、まっすぐに家に帰りました。
外には春の陽気がおとずれていました。
道端で色々な人たちに造られた、雪だるまたちが次々と溶けていました。
翌日も良い天気でした。
春の陽気で、道端の雪だるまは、ますます溶けてしまっていました。
まだ転校生は、学校を休んでいました。
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少年・佐藤くんが、最後にどんなことに気付くのか、楽しみです。