「おや、いつかの男の子かい?」
病室に御婦人があらわれました。いつだったか病院でウソハチじいさんをからかったとき、私をきつく怒ってくれた御婦人でした。
「雪ん子が消えたらしい」
「へえ」
「・・・・」
「雪ん子は、どんな姿をしていたの?」
「転校生」
「転校生ねえ」
御婦人は笑い出しました。
「じいさんが、雪ん子に会った時は、雪ん子は私の姿をしていたんだっけ?」
「え? じいさんも雪ん子に会ったの?」
「(ウソハチ)・・・・」
「おばさんの姿ででてきたの?」
「そうよ、四十年も前の話だけれどね。このじいさんは、あまり愛想が良くないから、村では少し浮いてるのよ。親戚も含めて誰も相手にせん。家族もおらんしなあ。昔から一人暮らしだし。だから雪人形を造ったらしいのよ。そしたらね、私の姿した雪ん子が現れたんだと。それからじいさんの家が賑やかになってなあ」
「・・・・」
「それを不思議がった近所のものは、じいさんのところに、こっそり見に行ったんだと。そしたらじいさんは、一人で雪遊びをして笑っておるだけで、他に誰もおらんかった。誰もおらんのに誰かに話しかけておった。その誰かというのが雪ん子だったらしいんだが、不思議なことに、その雪ん子は、私が現れると消えてしまうらしい。雪ん子は、私そっくりで、私がいないときに現れ、私がいる時には消えてしまう」
「・・・・」
「近所の人は、誰もおらんのに誰かに話しかけて雪遊びするじいさんが、気がふれたと思っていたから、私をよく遊びに行かせたのさ。そうすれば、じいさんは大人しくなるから。それから40年間、じいさんとは腐れ縁」
と御婦人は笑い出しました。そしてウソハチじいさんは口をひらきました。
「転校生とは仲良くするんだぞ」
「どうして?」
「雪ん子は、自分が一番仲良くしたい人の姿になって現れるからさ」
「!」
私は、病院を駆け出しました。
もう一度、雪人形を造った山に向かって走り出しました。
あれから40年近くたっています。
しかし一度も私は、雪人形を造っていません。
話はかわりますが、私の住む北軽井沢というか浅間高原で、たくさんの雪人形が造られています。北軽井沢や浅間高原で営業しているペンションオーナーたちみんなが集まって、たくさんの雪人形が造られつつあります。そして、その雪人形は、二月一日の今日の16時頃、完成する予定です。浅間高原ウインターフェスティバルのイベントの一つとして。
冬の北軽井沢&浅間高原は、淋しいところです。夏は賑わうスーパー避暑地も、冬は人が訪れることもなく淋しいかぎりです。淋しいということは辛いことです。
淋しさの中で耐えるくらいなら雪ん子に色々な悪戯されたいと願った北軽井沢&浅間高原の人々は、たくさんの雪人形を造る決心をしました。そして、こんな雪人形を造りました。
はたして雪ん子は現れるのでしょうか?
ところで私は、雪人形造りには参加していません。
私の担当はホームページ造りです(http://wf.yoyoyoi.net/)。
もうよいのです。
私の雪ん子は、一人だけでいい。
その訳は、機会があったらお話ししましょう。
でも、みなさんはどうですか?
雪ん子に会ってみる気分になっていませんか?
誰かに悪戯されてみたい気分になっていませんか?
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そして、浅間高原の雪人形たちは、今頃、いろんな人々の目を楽しませているのでしょうか?
浅間高原の人々に、雪ん子の素敵なイタズラが起こりますように。
今日、多摩丘陵にも雪が降りました。
が、雪人形を作れるほどの雪ではなく、既に氷になりかけてグチャグチャなのが残念です。
ブルーベリー滞在中も走り込みをしてただけに不本意で凹みました。