片手(五十肩)だけで北アルプス縦走してみた4
2010年10月13日、朝4時に目が覚め、出発の準備を行いました。朝食は5時20分。メニューは、目玉焼きとウインナーソーセージにキャベツの千切り。そして、味噌汁・御飯・漬け物・高野豆腐。御飯と味噌汁は、何杯もおかわりできます。ただし、食堂が狭いので山小屋のスタッフが、おかわりの御飯をよそってくれます。中には、3回も4回もおかわりする人がいます。私は、そんなめんどくさいのは嫌なので
「おかわり御願いします、大盛りで!」
と御願いしました。すると、てんこ盛りで返ってきました。それを2回繰り返して終了。味噌汁も2回おかわりしました。
てなわけで、10分で食事を食べ終えて、外にでました。
御来光をみるためです。
日の出は、朝5時40分。
食事に手間取っては見られません。
実は、山屋の間では、この北穂高小屋から見る御来光が最高なのことで有名です。槍ヶ岳を染めるモルゲンロートの美しさは、北穂高小屋でしか見られません。槍ヶ岳のそばにある槍ヶ岳肩の小屋から見た槍ヶ岳は、ここほど美しくないからです。むしろ殺生ヒュッテから見た槍ヶ岳のほうが美しいくらいで、やはり一番美しいのが北穂高小屋から見た槍ヶ岳なんですね。あと、涸沢・奥穂高のモルゲンロートも見られます。北アルプスで、一番贅沢な朝が味わえるのが北穂高小屋なのです。
その北穂高小屋を今まで私が使えなかったのは、十数年にわたって団体登山を行ってきたためです。二十人から四十人もの登山初心者を引き連れて山に登るとなると、北穂高小屋は最初から断念せざるをえませんでした。しかし、今回は、夫婦2人の登山であり連休後の閑散期なので北穂高小屋を使えたわけです。
で、素晴らしい御来光を拝めました。
槍ヶ岳のモルゲンロート。
壮大な岩場。
大キレットのモルゲンロート。
今日は、この岩場を縦走し、槍ヶ岳まで行く予定です。
差し込む朝日。6時14分。
素晴らしいですね。
でも、本物はもっといい。
ちなみに、このブログの画像の名前は、全て撮影時間を名前にしてあります。「1013-06-14.jpg」という名前の画像なら10月13日6時14分です。画像の名前を調べることによってコースタイムが、詳しくわかります。で、6時55分に北穂高小屋を出発しました。これがその時の写真です。遠くに槍ヶ岳が見えてますね。
ちなみに北穂高小屋には、40人くらいの泊まり客がいましたが、このルートを通ったのは、私たちを含めて、たった4人だけでした。そして槍ヶ岳方面からすれ違った登山客は、6人でした。こんなに人に出会わない大キレットも珍しかったですね。おかげでマイペースに行動できたのはよかったですね。
さて、大キレットは、難所として有名な場所ですが、その難所の中でも一番の難所が『飛騨泣き』と言われている場所で、北穂高小屋から降りてすぐのところです。毎年、ここで数人が死んでいます。まず落石がおきやすい。そして、高度差100メートル以上のナイフリッジ。畳のヘリを歩くような際どいルート。二十年前に初心者5名を連れて、そこを通過したときは、さすがに『やばい』と思って、初心者たちにはザックを持たさずに通過させたくらいです。ここを五十肩の人間が、どうやって通過すべきか。
まず、ソロリソロリと這いつくばるように降りました。こんどばかりは
「痛っ!」
とうずくまると確実に死ぬので、どんなに痛くても仁王立ちしなければならない。しかし、五十肩の激痛は、数分間人間の活動を停止するので、慎重にも慎重を重ねて降りていきました。手に体重をかけたら終わりなので、足だけで降りるようにしましたが、大キレットの岩場は、手無しで降りられるようなレベルではありません。膝を使い、腰を深く落とすことによって、なんとか右手だけで降りるようにしました。
「なんで、こんな簡単なことができないんだ」
「なんで、こんな簡単なことができないんだ」
「なんで、こんな簡単なことができないんだ」
「なんで、こんな簡単なことができないんだ」
五十肩でなければ、何でもない岩場が、すごい難所になっている。
健康体なら何でもない岩場が、
何の変哲もない岩場が、五十肩だと超難所として立ちはだかる。
「おちつけ、急がば回れだ! ゆっくりいこう!」
こうなると頭脳戦です。
岩と己の身体能力を計算するする。
今日のコースタイムは、槍ヶ岳までのたったの7時間。
だから慌てなくていい。
ゆっくり、確実に、正確な計算を行って岩を降りよう。
安易な下山は、死を招く。
で、問題の飛騨泣きに到着。
そこは、本当なら腕を使わずには渡れない場所だった。
五十肩には無理な場所だった。
だから、北穂高小屋で深夜に渡り方をシュミレーションし、
何時間もイメージトレーニングで瞑想した。
しかし、
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
飛騨泣きの危険箇所には、安全な足場が作られていた。
「なーんじゃコレ!」
拍子抜け。
拍子抜けも、拍子抜け。
と言っても、危険な岩場には違いないのですが、
北穂高小屋で何時間もイメージトレーニングしたのは無駄だった?
15年前、この大キレットに25名の初心者と足の不自由な青年を連れて通過したことがある。その時は、この危険箇所に私の足置いて、安全な足場にして自由な青年を通過させた。彼の荷物は私が背負った。20年前には、生まれて初めて山に登る女の子の手を取って通過させた。彼女の荷物は私が背負った。あの苦労は何だったのだ?
「アッ!」
しかも飛騨泣きにゴミが捨てられていた。
それも大量のゴミが。
私は沸々と怒りが湧いてきましたね。
「いったい誰何じゃ!」
後日、某山小屋で、大キレットにゴミが散乱していたことを訴えったら、
「北アルプスも国際化してきたんですよ」
「・・・・・・」
そういう事かい!
そういう国際化はいらんだろう。
さらに、こんな事も言ってました。
「ガイド会社が増えて、マナーの悪い団体さんが増えたのも事実です。もちろん日本人とは限りません」
なるほどなあ。
どうりで珍しい字が印刷してあったゴミが捨ててあったわけだ。
あえて国名は、明かしませんが、こういう人たちは、
もう北アルプスに来ないでもらいたいですね。
話しを戻します。
8時50分。飛騨泣きを通過して最低部に到着。
横尾本谷が美しい。
いつか。ここを降りて屏風岩に行ってみたい。
ちなみに私は、二十歳頃に山岳会で、この横尾本谷を登ったことがありますが、正直言って全く記憶がありません。やはり連れて行ってもらっては駄目で、自分で右往左往しながら通過しないと印象が薄くなるのでしょうね。
とんがってる岩山は、南岳小屋の山のピーク。
ここを越えると南岳小屋があります。
奥にあるなだらかな山が南岳。
こちらは北穂高。
ここまでやってきました。
9時24分頃です。
これが大キレットの稜線。
こんなところを空中散歩してきました。
両側の景色は最高です。
屏風岩です。
さすがに美しいですね。
10時15分、南岳小屋に到着。
予定より、大幅に遅れましたが、
これは五十肩の激痛でびびって、守りに入った岩登りをしたためでしょう。
(でも、ジャストコースタイムぴったりだった)
ゴミをヘリで運ぼうとしている。
荷物に
嬬恋村農協のキャベツが!
嬬恋村のキャベツが、こんなところにも来るのかあ!
てことは、山小屋の食事には、嬬恋村のキャベセンがでるんだなあ。
感慨深いですねえ。
とにかく南岳小屋で食事を。
今日の昼食は、アミノバイタルゼリーと、スニッカーズと各種サプリメント。
いろんな行動食を食べてきましたが、激しい縦走スニッカーズが一番だとというのが私の結論です。日帰りは別ですよ。私が行ってるのは2泊以上のケースです。理由は、携帯のしやすさと食べやすさです。しかも、たったの53グラムの重さで、260キロカロリー。タンパク質が4.6グラムもあります。これをおやつで食べようものなら、たちまちデブのできあがり。間違えても、下界では食べてはいけない食品ですが、山では、最高の行動食になります。
逆に登山に向かないのが、カロリーメイト。こなっぽくて、水なしで食べにくくて、すぐに飽きてしまう。長所としては、バランスがとれているところが良いことは認めますが、これは他の錠剤サプリメントで代用すればいいわけだし、食べてすぐに力が湧いてこないところや、食べにくさや、変形
しやすさを考えると、私はおすすめできません。
食後、南岳に登頂。
10時30分。
遠くに槍ヶ岳が見えます。
逆方向には、北穂高が見えます。
ここが今日の中間線です。
とにかく槍ヶ岳に向かって出発。
11時55分。中岳に到着。
景色が美しすぎて、早く槍ヶ岳に到着するのがもったいなくなってしまった。
足取りを、ゆっくりめに、北アルプスの空中散歩を楽しみます。
天狗原。
美しい。
12時30分。大喰岳。
ついに、ここまで来てしまった。
ここまでくると、槍ヶ岳は目の前。
普通は、目標が近づくと嬉しくなるものですが、今回は逆です。
目標が近づくと、何か寂しくなる。
天候に恵まれ景色が良すぎると、こういう気分になるものです。
で、槍ヶ岳肩の小屋に到着。
13時15分頃です。
槍ヶ岳肩の小屋に到着した私たちが真っ先にしたことは、
カップラーメン(400円)を注文したこと。
不思議なことに、山で食べるカップラーメンくらい美味しいものはありません。
その後、チェックインしてベットメイクし、一休みして、槍ヶ岳にチャレンジ。
本当は私は、五十肩なので登りたくなかったのですが、
嫁さんが、どうしても登りたいというので、渋々登りました。
槍ヶ岳へは、空荷であがりました。
荷物を背負ってないためか、
どんな岩場でも歩いて登れる!
不思議だ。
荷物がないと、這いつくばらずに登れる。
五十肩を全く気にしなくていい。
これは凄いぞ!
荷物がないって、素晴らしい!
14時10分から登って、15分後には頂上に着いてしまった。
夏場だと、渋滞で1時間はかかるのですが、誰も登ってないので早く登れました。
オフシーズンって、素晴らしい!
やはり山は、オフシーズンですね。
小槍ヶ岳です。
こんな歌を歌いました。
『アルプス1万尺、小槍の上で、アルペン踊りを踊りましょ♪
ラーンラララ、ララララ、
ラーンラララ、ララララ、
ラーンラララ、ララララ、ヘイ♪』
槍沢カールです。
明日、ここを下って下山し、8時間かけて上高地に向かいます。
つづく
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